茹だるような暑さの夏が終わり、体を通り抜ける冷たい空気が心地よい秋が来た。廊下を走れば白髪が目立つ女中に叱られたけれど、私は目的の場所まで一目散に走る。

その時だった。着物の裾に足の指が引っ掛かり顔から床へと落ちていく。嗚呼、きっとこれは顔をぶつけてしまうんだわ。そう思い目をぎゅっと瞑れば「…何をしているんですか」と呆れかえった声が聞こえた。
お腹にかかる圧迫感。見ればそこには人の腕。顔を上げれば小十郎が呆れかえった表情で私を見ていた。


「ちょうど良かったわ。今、政宗のお部屋に行こうと思っていたのよ」
「政宗様は執務の最中でございます。そして先日も申し上げましたが、あれ程廊下は走ってはいけないと、」
「こんないい天気の日に執務?そんなの人生損してるわ!」


さぁ、行くわよ小十郎!
そう言って小十郎の大きな手を掴み、自分より大分大きい彼を引っ張るように政宗の部屋へと連れていく。私の背中には小十郎の大きなため息が聞こえるけれど、私はもう慣れているため気にもならない。

部屋へと着き、勢いよく障子を開ければ政宗は」筆を持ち執務をしておらず、代わりに縁側に座りすっかり赤色に染まった木々を見ていた。


「Hey、名前。遊びに来たのか?」
「えぇ。そこで小十郎にも出会ったから連れて来たの」
「政宗様!あれほど執務をっ…!」
「せっかくこんなに心地よい日なのに執務なんて勿体ないわ」


ねぇ、そうでしょう?
眉間に皺を寄せた小十郎に向かい言えば、「まぁ、今日一日ぐらいは良いでしょう」とため息交じりに言ったのを聞けば、「名前、come here」と政宗が言ったのを聞き、傍に寄り隣に座れば、政宗の筋肉質な腕が私の肩へと回る。


「最近、南蛮語分かるようになって来たでしょう?」
「あぁ、名前は頑張りやだからな」
「私はそれを他の所にも生かして欲しいと切に願いますがね」
「もう。小十郎は意地悪ね」


そんなことを言いながら政宗とは反対側の私の隣に座った小十郎の大きな掌が、私の頭に触れた。二人分の体温が体に伝わってくるのに、吹く風が冷たくゆっくりと体温が落ちていく気がした。


「今日はどこにも行く予定ない?」
「あぁ、無いぜ」
「じゃあ紅葉狩りに行きましょう!」
「名前様は本当に紅葉が好きですね」
「えぇ!あれほど綺麗で可愛いものなんて存在しないわ」


私がそう言えば、政宗が鼻で笑った。何で笑うのよ、と言えば「いや、何でもねぇ」と言いいながらもまだ笑っていて、下から睨みつけるように見れば「sorry」と言い小さく咳払いをした。


「俺の中では名前以上にbeautifulでcuteなものなんて存在しないけどな」
「えっ、!」
「そうですね。名前様は何よりも可愛いですよ」
「、小十郎」
「綺麗かは微妙ですが」


小十郎がそう言うと政宗はお腹を抱えて笑いだした。褒められたはずなのに恥ずかしくなって、二人の大きな背中を叩けば「ごめん」と口々に言い、頭を優しく撫でてくれたから照れてそれ以上なにも出来なくなった。

20120927

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