学校からの帰り道、ユウジと一緒にいれる貴重な時間を、互いに手を繋ぎ、ゆっくりと歩く。
空には星が輝き、薄暗い道路を電灯の明かりだけが乏しく照らしている。
中心街は賑やかだけれど、少し道が反れればそこは静かな住宅街が広がっていて、私たちはわざとそこを選んでいるのだ。

放課後、部活をしているユウジと帰宅部の私では帰る時間が大幅に違う。
しかも私はユウジが部活を終わるのを待っている、可愛らしい忠犬のような彼女ではない。
だからこそ、余計に学校帰りというシチュエーションが酷く愛しく感じてしまうのだ。


「それにしても寒くなってきたね」
「腹出して寝んなよ」
「出してへんわ」
「こないだ思いっきりパジャマめくれとったのは、どこの誰やったけなぁ?」
「知りませーん」


ユウジはたまに親のようなことを言ってくる。
でもそれが私の為を思い、考えてのことだと思ったらとてつもなく嬉しいのだ。

繋いでいる手をそのままに、腕を絡ませ、ユウジの肩に頭を寄せてみる。
すると「今日の名前はえらい甘えたさんやな」と言った。その口調はとても優しい。


「俺な、そうやって名前に甘えられるの、めっちゃ好きやねん」
「なんで?」
「愛されとるなーって感じるから」


ユウジはそう言った後、「まぁ、甘えんでも愛されとるのは実感しとるけど」と呟いた。


「私な、ユウジが思っとる以上にユウジのこと好きやねんで」
「え、そうなん?」
「うん。デートの前日とかユウジのことで頭いっぱいやし、ユウジと一緒におるだけで溶けそう」
「そら重症やな」


笑いを含めながら言うユウジを見るために、ちらり、と目線を上げれば自然と目線が合う。
ユウジの方が背が高いからどうしても逆光になってしまい、表情は良く見えない。
けれど、きっと今、ユウジは微笑んでいるのだろうと何故か私は思っていた。


「今日の名前は一段と可愛いから俺死ぬかもしれん」
「じゃあ一か月に一回ぐらいはお花添えに行くから」
「一緒には来てくれんのかい」


そう言ってくすくすと笑い合う。
こんなくだらない会話が永遠に続けばいいのに、と柄でも無い事を思ってしまった、そんな帰り道。
20121114

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -