生クリームのような髪の毛が、太陽に照らされて輝いた。
それが眩しくて目を細めれば、ゆっくりと視線が俺の方を向いた。
すると乾いたばかりの真っ白なタオルをベンチに置いてから、俺の元へと駆けて来た。


「財前くん、どうしたん?」
「え?」
「さっきこっち見てたやろ?何か用事あったんとちゃうん?」
「…いや、何もないっすわ」
「そう?じゃあ、何かあったら言うてね」
「ありがとうございます」


ふわりと笑う名前先輩は、素直に可愛いと思う。
ちょっと垂れた目も、少しだけ尖った八重歯も全部。

その時、名前先輩を呼ぶ声がコートに響いた。
声の主は誰か聞かんでも分かるぐらいに聞きなれた声。
名前先輩の顔は一瞬にして、花が咲いたようになる。


「部室におらんから、今日サボりかと思ったわ」
「もう、サボるわけないやん」


白石部長に頭を撫でられ、頬が淡く桃色に染まる。
それを見とるだけで、胸が締め付けられ苦しくなる。

子どもやないから、この気持ちが何を意味するかぐらい知っとる。
けど、絶対に叶わんから、一生このまま閉じ込めておくつもりや。


「今日部活終わったら、ご飯でも食べ行こか」
「ほんま?」
「おん。どこ行きたいか考えといてな」


そう言って白石部長の指が、名前先輩の髪の毛を滑っていく。
名前先輩の髪の毛が、部長と同じ色になったのはどれ位前かも思い出せん。

すると、さっきまで白石部長に向いていた視線が俺の方を向く。


「もし良かったら、財前くんも来ん?」
「いや、俺はいいっすわ。部長と思う存分いちゃついて来てください」
「なっ、何言うてんの!」
「財前分かっとるやん。明日一日休みやし、今日は寝かせへんで」
「あほ!いらんこと言わんでええわ!」
「あーあ。目の前でいちゃつかれるのほんま腹立つわ。あっちで謙也さん苛めてきます」


まさに捨て台詞やったと思う。
二人に背中を向けて歩き出した俺に、名前先輩の小さく俺を呼ぶ声がぶつかった。
たぶん、白石部長は俺の気持ちに気付いてるんやと思う。

誰にも気付かれないように、静かに拳を握る。
そして目の前で金ちゃんと訳分からん話で盛り上がっとる謙也さんの脛を思いっきり蹴ってやった。
20121220

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テーマ「人外ファンタジー」
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