目の前で頬を膨らませながらメロンソーダを飲んでいる名前ちゃんは、実年齢よりも幾分か幼く見える。
そんなことを本人に言ったら「小春ちゃんまで子ども扱いするん?」と怒るのだろう。
またそれも可愛いんやけど、と思っていたら名前ちゃんの目線がテーブルに置いてある携帯から、ゆっくりとアタシへと向けられる。


「なぁ、私ってそんなに子どもっぽいんかな?」
「んな事ないで。名前ちゃんは立派な女性やで」
「…慰めやと分かってても小春ちゃんの言葉に救われるわ」


名前ちゃんはそう言うと大きなため息をついた。
慰めちゃうねんけどなぁ、と思うけれど今の名前ちゃんにそんな事を言っても信じてもらえないだろう。

すると名前ちゃんは携帯を構っていた手を止めたかと思えば「見て」と言い、携帯の画面を私に見せてきた。


「…誰これ」
「ユウジの好きなAV女優」


画面に映った女性は何とも言えない厭らしい下着を付け、妖艶な雰囲気を出していた。
そう。分かりやすく言えば、名前ちゃんとは真反対の女性だ。

名前ちゃんはまた大きなため息を付いたかと思えば「こんな人に勝てるわけないやん」と呟いた。


「ユウくんがAVを見とるのも問題やと思うけど、一体何があったん?」
「んー。ユウジに"お前は色気が足りん!"って言われた」


頭を垂らし、悲壮感を漂わせているその姿がとても痛々しい。
けれど同時に、ユウくんの為にそこまで落ち込んでいると思ったら、とても可愛らしくて仕方ない。
思わず笑いが零れれば、名前ちゃんの真ん丸の瞳が少し釣り上がり、口を尖らせ「何笑てんねん」と少しだけ怒りを含んだ口調で言われた。


「あほらし」
「なっ、」
「あんな、AV女優は色気があってなんぼやねん。見とる人に満足してもらわなあかんねんで?」
「んー…」
「それに比べるユウくんもユウくんや。名前ちゃんがそんなに色気たっぷりやったら、ユウくんなんて構ってももらえんわ。気にせんとき」


アタシがそう言うけれど、名前ちゃんはまだ納得いっていないようで、うんうんと唸っている。


「色気なんて必要ないねん。ユウくんには名前ちゃんがおって、名前ちゃんにはユウくんがおる。それで充分やろ」


宥めるように、ゆっくりと、名前ちゃんの心に響くように喋る。
すると名前ちゃんは眉を下げ「ありがとな、小春ちゃん」と言った。


「よそはよそ!うちはうち!比べるもんちゃうねん!な!」
「せや」
「あー、何か落ちこんどった自分があほらしわ!」


名前ちゃんはそう言い、歯を見せニカリと笑った。
その笑顔にやっぱり胸がきゅんと高鳴っていくのが分かった。
20121112

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