月が空に昇り、街が死んだかのように静かになると唐突に寂しくなる時がある。
ベッドに横たわり、ユウジに貰ったチャーミングちゃんのぬいぐるみを抱きしめる。

私の家に来ると必ず抱きしめるこのぬいぐるみには、ほんのりとユウジの香りがする。
ふわふわのお腹部分に顔を押し付けると、ユウジに抱きしめられているような錯覚を起こす。


「会いたいなぁ」


深夜を過ぎているこの時間に無理だって分かっているのに、零れ出た言葉。
自分で言った癖にもっと寂しくなってしまい、涙が滲んだ。

ベッド横のサイドテーブルに置いてある携帯を手に取り、メールの受信フォルダを開く。
そこはユウジの名前で埋め尽くされていて、それだけで胸が締め付けられた気がした。

早く寝てしまえばいいのに、考えれば考えるほど目が覚めてしまう。
ユウジに恋をしてからというもの、自分が段々と乙女になってしまうのが可笑しくて仕方ない。

その時、手の中で携帯が揺れ、"着信 ユウジ"と表示された。
驚いて携帯を一回落としてしまい、慌てて拾い上げボタンを押す。


「もっ、もしもし」
『お!起きとったか』
「うん。でも、どうしたん?」
『とりあえず寝んなや』
「え?なん…切れた」


ユウジはよく分からない事を言ってから、すぐに通話を切った。
寝んなと言っていたけれど、一体何なんだろうか。

どうしていいか分からないから、私は部屋の窓を開け、空を見上げた。
今日は普段より空気が澄んでいるようで、いつもより星が良く見える気がした。

その時、とっとっと、と靴の底がアスファルトにぶつかる音がした。
こんな遅くにランニングでもしてる人がいるのだろうかと思い、目線を音がする方に向けたら、そこには会いたくて会いたくてたまらなかった人がいた。


「ユ、ウジ…」
「何や分からんけど、急に名前に会いたなって来たった」


外は暗く、私の部屋の電気だけがユウジを照らしているのに、何故かその表情がはっきりと見えた。
頬も鼻も赤く染まり、吐かれる息が白く染まっている。

それを見た途端、自然と足が動いた。
部屋を飛び出し、階段を勢い良く降り、慌てて玄関のドアを開ける。


「夜遅いんやから、そんな音立てたら怒られるで」


そう言ってユウジは笑った。
きゅう、と胸が締め付けられ、私はそのままユウジに抱きつく。
パジャマだろうが、すっぴんだろうが、何であろうが気にならない。


「…私も会いたかった」


ユウジの胸に顔を埋めてそう呟くと、大好きな掌が優しく頭を撫でてくれ「寝てるんちゃうかって心配しとったけど、いらん心配やったな」と言って、旋毛に唇を落とした。
20121122

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