スパーク・ロマンティカ


疲れた。まさにその単語一つで俺の気持ちを全て悟れるだろう。中学時代よりもハードになった練習は体に悲鳴を上げさせるのが好きなようだ。とは言っても強くなりたいという気持ちは、あの日から更に増した。故に練習が辛いとは言い切れないのも本心なのである。

みんなと重たい体を引きずりながら校門へと向かった時だった。門に背を預け、月の光に照らされている人の姿があった。この辺りでは見慣れない制服。だけど俺はあの姿をよく知っている。


「っ、名前!」
「あ、精市くん」


名前を呼べば振り向いたのはやっぱり名前で、俺の顔を見た途端回りに花が舞うぐらいの笑顔を見せた。それに堪らなくなり、俺は勢いよく抱き着く。

名前の甘ったるい香りが酷く心地好い。細い体は強く抱きしめたらすぐに折れてしまいそうだ。


「あの、精市くん…」
「ん、なに?」
「何って、あの、お友達が、」


名前の高さに合わせて抱き着いているから、耳に名前の息が当たりくすぐったい。と思ったのは一瞬で「…ゆっ、幸村っ、!」静かに低い声が響いた。

俺は名残惜しく感じながらも、名前から体を離しみんなへ体を向けると、明らかに興味津々そうにこちらを見ていた。


「こっ、公共の場で女子に抱き着くなど、たるんどる!」


真田のその声に俺の背にいた名前の体が震えたのが分かった。俺は名前の頭を優しく撫でてから肩に手を回し、俺の隣に並ばせた。


「真田の怒鳴り声で俺の彼女が怖がったんだけど、どうしてくれるの?」
「せ、精市くん、私そんな、」
「名前は悪くないよ」


ぽんぽんと優しく肩を叩く。すると名前は眉を下げ、困ったように笑った。

そしてその後、柳以外のみんなの叫び声が響き渡ったのは言わずもがな、である。

20120614

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