木漏れ日に揺らぐ微笑


部活のない久しぶりの休日。今日は前々から名前が行きたいと言っていた森林公園へピクニックに行くことにした。木々から零れる葉陰、優しい時間、名前の笑顔。それだけで俺の中の疲れは全て吹き飛ぶのだ。

休日ということもあり、人で賑わっている。普段なら嫌悪しか感じない煩さも、名前がいるおかげで気にもならない。

しっかりと手を繋いだまま、俺達はゆっくりと歩く。その時、目の前にボールが転がってきたかと思えば、とてとてと短い足を一生懸命に動かしながら男の子がこちらへとやって来た。

すると触れ合っていた手が離れ、名前を見れば俺を見上げ優しく笑った。俺はしゃがみ、ボールを手に取る。


「これ、君のかい?」
「うん!」
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」


男の子はそう言うと歯を見せてにっこりと笑うと俺の手からボールを受け取り、来た道を走った。俺が向けた目線の先には男の子の両親であろう人がいて、こっちを見て頭を下げた。


「やっぱり子どもって可愛いね」
「欲しくなった?」
「いつかはね」
「じゃあ、結婚したら頑張ろうかな」
「馬鹿じゃないの」


名前はそう言うと少し頬を染めて、唇を尖らせた。それが可笑しくて笑いながら謝れば、頬を膨らませ先に歩き出したから慌てて俺も付いて行く。

隣に並び、名前を呼んでも無視するから黙って手を繋いでみれば振りほどかされる事なく、安心する。


「、ねぇ」
「ん?」
「やっぱ、なんでもない!」
「何それ。凄く気になるんだけど」
「気にしないで」


名前はそう言うと俺を見上げ、にかりと笑ったかと思えば繋がっている手に力を入れ、急に走り出した。


「っ、ちょ、」
「ほら、早く行かないといつもの場所取られちゃう!今日、気合い入れてお弁当作ってきたんだからね!」
「それなら走ったら弁当の中身、崩れるよ」
「…あ、そっか」


そう言うと名前はピタリと止まり、少しだけ舌を出して照れくさそうに笑った。それが可愛くて、思わず人前で抱き着きそうになったのは、俺の心の中に秘めておくことにしておく。

20120614

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -