咲くや此の花の夢


久しぶりに会えたからと言って無理をさせすぎたかもしれない。

そう思いながら隣ですやすやと眠る名前を見つめる。首筋から胸元にかけて俺によって付けられた鬱血の跡が生々しく残っている。白い肌にはそれが酷く映え、痛々しく思う程だ。

そっと跡に触れる。たったそれだけのことなのに指先が熱を持ったように熱くなった。それはまるで俺が名前に与える愛情のようだと思い、思わず笑みが零れる。

でもそれと同時に、昨夜響いた名前の喘ぎ声を思い出す。いつも以上に甘ったるい声で俺を呼ぶ声、求める声。桃色に染まった肢体、涙を浮かべる瞳。それが脳内を横切るだけで自分の体が熱くなるのが分かった。

最低だと分かっているけれど、俺はどうしようも無く名前に恋焦がれている男なのだ。白いシーツに包まれているだけで、綺麗な身体をさらけ出している彼女に欲情してしまうのは無理である。

名前を起こさないように、静かに自分の身を被せる。目線の下にはすこやかに眠る愛しい人の可愛い寝顔。閉じられた瞼に唇を落とせば小さく声を零した。

そして、たくさんの花が散っている首筋に顔を埋める。朝方まで続いた情事であれ程の汗を流したというのに、そこからは目眩がする位の甘ったるい香りが漂っていた。

そのせいで残っていた理性なんて微塵も無くなり、俺は僅かに空いたスペースに勢いよく吸い付いた。すると寝起き特有のぼんやりとした声で俺の名前が呼ばれ、顔を上げれば、まだ開ききっていない瞳で名前は俺を見た。

それですら愛しくて自然と笑顔が零れる。名前と一緒にいると表情筋が緩くなってしまって仕方ない。


「おはよう、名前」
「…おは、よう」
「ごめん、起こしちゃったかな?まだ寝てていいよ」
「、なんで上にいるの」
「名前が可愛くて仕方ないからだよ」
「ふふっ。訳わかんない」


名前はそう言うとへにゃりと笑い、手を伸ばし俺の首裏で絡ませる。そしてその腕に力を入れ、俺の顔を自分へと引き寄せた。


「体、痛いからキスだけだよ」
「…我慢する」


そう言って、俺はゆっくりと名前の唇に噛み付いた。

20120614

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テーマ「人外ファンタジー」
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