p.s.

 すべてを失ってから始まる物語。なにひとつそれらを取り戻すことはなく、長曾我部自身もやるせなさだけが、喪失感だけが、残ったのではないかな、と、せめてそうだったらいいなと思います。
 徳川視点での物語も知っているから、最初から最後までつらかったです。何度「アニキの馬鹿野郎!」と思ったか知れない。誤解が解消する、ふたりがしあわせなルートが見たいです。
 けれどもすれ違いの悲劇も、つらいのはつらいのですが、嫌いではなく、それはまた別の次元でむしろ好きです。これはこれでとてもよかったなと、思います。

 黒田とのやりとりが個人的には好きでした。黒田の、悪者になりきれない人柄を垣間見ているようで楽しかったです。長曾我部の仲間になれるほどしたたかではない、というか。やさしいひとなのだろうなと。
 ほんとうのことを知ったら長曾我部はどうするのかな、なんて想像してしまいます。べつのルートに期待です。

 石田に関しては、不幸で繋がる友情、というのは奇妙でありながら、長曾我部の包容力を思えば納得もできます。それに、一度深く関わって友情を育んだひとに裏切られたら、それをもう一度信じる、というのはきっと難しく、ともすればあまり知らない相手をそのまま信じてみるというほうがずっと簡単で自然ではあります。なんせ、同じ経験をして同じ目的をもつ者です。
 また、自分を裏切るなと、「絶対だな!」と念を押す石田はやっぱり子どもで、その揺らぎなさが痛い。長曾我部がいつか石田をその一本道から無理やり外して、いっしょに寄り道してくれるようになったらすこしは彼の目に映る世界も変わるのかな、なんて思います。そういう日がくればいい。

 徳川は、もう本当に自己犠牲のひとですね。どうして自ら傷つく道を選ぶのか、と悲しくも思うのですが、自分が傷ついても相手がしあわせになれるのなら満足なんですよね、たぶん。
 この場合は、長曾我部は徳川を討っても絶対にしあわせになんてなれないのですが、怒りと憎しみで瞳の曇った彼に、なにを云っても言い訳や上辺のことばにしか聞こえないだろうと、そう思ってのことなのだろうな、と思います。それにしたって悲しすぎるけれど。

 3を実際にプレイするまでは、関ヶ原組なら石田派だったのですが、いまやすっかり徳川推しになっていることに気がつきました。しあわせにしてあげたい。蒼紅なら云わずもがな真田、瀬戸内なら長曾我部です。ぱっと明るくて健気なキャラが好きなようです。わかりやすいね。

 つぎは新キャラかつ人柄に惹かれる黒田をプレイしたいなと思います。

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テーマ「人外ファンタジー」
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