p.s.

 上田に辿り着くまでの伊達の苛立ち具合が好きです。上杉さんに八つ当たりしたり、猿飛に「それって八つ当たりだろ」って指摘されて開き直ったり、国主ではなくひとりの人として動いていることがよくわかります。年相応に子どもっぽい。そしてそうなると片倉さんの保護者加減が際立つ、という。実際、前作までより小言が増えたな、と思いました。
 ことあるごとに感情的になっては諫められてきた伊達さんだけれど、上田での真田との件があって片倉さんのことばがあって、伊達は気づくことができる、っていうのがいいね。徳川との会話にもあるけれど、片倉さんと真田は伊達にとって大きな影響力をもつのだな、と。徳川赤ルートでの「三成を赦す気はないか。いまの独眼竜にならそれができる気がする」という科白も、パラレルではあれど、このあたりにつながると考えていいんですかね。
 それにしても片倉さんの口にする「あの日の誓い」のあの日っていつのことなのかな。外伝のときのことなのか、それとも石田に負けたあとの話なのか。宴のほうで掘り下げてあったりするんですかね。

 あとはもう、伊達と徳川のふたり、いいなと思いました。伊達の技を褒める徳川に、世界は広い、って謙遜する伊達がかわいい。また、伊達にはいまの徳川がひどく大きく見えたんだな、と。なんといったって、私怨に刈られていた伊達とは違い、徳川は日の本のために石田を目指していたんだから。
 ただただ怒りに任せて目指していた石田が、伊達にとってただの通過点に過ぎないものとなる、というのが、このストーリーでの彼の成長物語なんですよね。こういうすこしずつ成長していくお話は好きです。特に、伊達さんはカリスマで、端から見たら完璧に思えるようなひとなので尚更です。そういうひとが堕ちるところまで堕ちて、そこからまた這い上がっていく、というのがなんとも云えない。

 それと、いままで意識していなかったので少しびっくりしたのですが、伊達は徳川を「家康」って名前で呼んでるんですね。あまりほかの武将を名前で呼んでいる印象がないので珍しいなと思いました。長曾我部だって「西海の鬼」みたいな感じだし、前田も「風来坊」とか「色男」とかですよね。真田はフルネームが多いけれど、石田を庇った際に「どけ、真田!」って苗字で呼んでますね。
 となると、下の名前で呼ぶのは、あとは「小十郎」くらいな気がします。伊達さんなりの気の許し方なのかな。人称って少なからず相手をどう思っているのかの足掛かりになるのでついつい気になってしまいます。そのうち自分用に各キャラ人称対応表みたいなものつくってみたいです。

 また、伊達のこのルートの、石田の行く末が気になります。あのまま徳川のもとへ行ったとしても、あんな状態の石田を、徳川が討つだろうか。伊達が気づくことのできたことを、このあと、石田もまた気づくことができる、という微々たる可能性が希望なのかな。

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -