p.s.

 実際にプレイしてみて、徳川さんがとても好きになりました。強くて、ほんとうにいいひと。でも、いいひと過ぎて、自分ばっかり傷だらけになってしまって、痛々しくて、見ているほうが悲しくなってしまう。

 豊臣を手に掛けたことで石田とは決別。また、同じ師を仰ぐはずの真田とは相容れず、豊臣のことで前田ともどこかぎこちなく、利家はなにか怒っているし、長曾我部とは完全に擦れ違う。絆を謳いながらも、最初から最後まで、誰よりも孤独である気がしてなりません。それでも、自軍の兵士たちにはたしかに恵まれていたね。「さあ家康様、拳に薬を塗りましょう」なんて、ふとした味方兵の科白がやさしくて泣けます。すごく痛いよね、きっと。
 ただ、関ヶ原の戦いの前には「西軍につきたい者がいたら、そうしてくれ。そして、三成の力になってやってほしい」みたいなことを云うけれど、それは徳川自身がいままで築いてきた絆を信じきれていないのではないかな、と思う。意志も強いし、迷わないけれど、たぶん、自分に自信がないのだろうな。最後、石田を討ったあとひとりになるけれど、仲間の大切さを説きながら、第一の絆と称するはずの本多にさえも席を外させて、泣くときはひとりで泣いてしまうというところが、なにより彼の本質を表している気がします。
 また、雑賀荘にて石田から逃げる際や、最上との会話のあとなんかの、ふとした瞬間に見せる苦しいような悲しいような表情がやっぱり印象的です。徳川のフードは涙を隠すためのもの、というのをどこかで見ましたが、その涙の理由となる罪悪感や自己矛盾もぜんぶひっくるめて覆い隠して、それでも石田と戦うよ、という決意なんですね。

 あと、徳川のルートなのにあれですが、武田軍。というより、真田は、だいぶ徳川に負い目を感じているんですね。
 誰に対しても一点突破! な彼が、徳川にだけはいろいろ思うところがあって、卑屈っぽくなっているのがたまりません。虎の魂云々のこともあり、きっと嫌でも意識させられていて、さらにそれを自覚したうえで自己嫌悪に陥っている。いいね、なんか。悩め悩め、と思ってしまう。
 3の真田については賛否両論聞きますが、私はそういう、突っ走る道が見えなくなって、自信もなくなって、よく思えない相手にはちょっと刺々しくなってしまうような、だめだめな彼も、嫌いじゃないです。むしろ好き。背後取られて盛大に驚いたりするばかかわいさも健在ですしね。猿飛もけっこう露骨に厳しいけれど、武田軍兵士たちの科白で、それでも真田は武田の希望なのだな、というのがわかります。
 あとは、徳川のほうも、例えば「三成」や「慶次」「刑部」「独眼竜」、と大抵の武将は下の名前か役職や二つ名で呼ぶのに、真田は「真田」と姓で呼びますよね。上杉さんやお館様だって「謙信公」「信玄公」であり、姓では呼ばない。そういうところに、徳川もどこかで真田との距離をはかりかねているのかな、と感じます。ふたりは決して仲間にはなれないことを、知っているみたいに。

 ともあれ、徳川赤ルート、大変楽しかったです。鬱々としたり、切なかったりする物語は大好きなので、そういった意味でも美味しくいただけました。
 徳川がちゃんとしあわせになれるルートはあるのかな。二週目をやるのは先になると思いますが、他ルートも楽しみです。

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