君の泣き顔 | ナノ

俺の恋愛は一生において呪われているのではないのかという感覚に襲われたのは久しぶりだ。高校時代、名前に想いを寄せていた頃と別れた直後。何で名前を好きになってしまったのかと何度も何度も後悔した。こんなにきついなら好きになりたくは無かった。そういう感情をふと思い出すのは時折あった。あいつ特有の奔放さと放浪癖が苦手なくせに惚れて、結局は自分で自分の首をしめる。恋愛において俺はただの単細胞にすぎないなんぞ絶対に認めたくは無いが認めざる負えないのかもしれない。でもこの呪縛は一時的に俺に幸せな刻もくれた。でも反動と代償は大きく、俺の元から居なくなってしまった名前なんてもう想像するだけで切り裂かれる思いだ。(俺ももしや独占欲が強いのか?)
そんな名前との再開は予期せぬ場所だった。何年かぶりさえも計算できない女に何年も焦がれ続けていたのかと思えば、少し恥ずかしくなる。
名前を心から想っていた、というより想うことを許されていた時期があったことは確かで、永遠を信じてみたい日だってあった。まぁあの頃の自分が今に比べどれ程幼かったか一目瞭然。自嘲して、なるべくあの頃の甘ったるい想い出に浸らないように酒を流し込むが、やはり駄目だ。名前は予測できない女だ。いつも期待以上の喜びと想像以上の悲しみと傷を俺に残す。そして俺を惑わし、狂わせる。例えるとしたら濃霧の中蝶を追いかけて素手で捕まえろうとしているようなもんだ。名前は鮮やかだが霞んでて、おそらく俺の手で掴めたことなんてばない。でも掴みたいと足掻く俺はまるで子供みたいで見っとも無い。そんな俺の内心を知る由もなく軽い気持ちでキスをしてあげくの果てには家にまで上がりこんでくるとはけしからん女だ。
『何でって…ノリ、かな?』
ノ、ノリ?ふざけるのもいい加減にするのだよ!!!俺はもう恥ずかしくて二度とあのの店に入れないのだよ!このクソアマめ。それに俺にとってかけがえの無い二年間が名前にとっては只の軽はずみだったのではないかと悟らされる気がして凄く、辛い。
『…でも軽率なつもりはないよ。もし今真太郎に脱げって言われたら脱げるもん。』
『なっ…そ、それが軽率なのだよ!!』
『雰囲気に流されたとかじゃない。再燃した恋心とでも呼んでくれるかな?』
傲慢ささえ感じられる笑みはどこか旧友に似ている気がした。しかしどこかあの頃の面影が残ってて正直、居心地が悪い。
『好きだよ?真太郎。』
また軽々しくそんなことを口にしやがって。腹ただしかったののもつかの間で、すぐにあの頃の甘ったるい感覚と記憶が蘇ってくる。名前の貪るようなキスが再び俺の唇に落とされ、懐かしくなった。
『今日から、ココはあたしのポジションね。』
ベッドに腰掛ける俺の隣に座り込み、屈託も無いアホみたいな笑顔を浮かべている。そして一瞬、とても愛おしく思えてしまった。



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