君の泣き顔 | ナノ

『瑛一、今度のオフは何すんのー?』
収録の合間の休憩時、楽屋では珍しい今度の三連休に話題が出た。HE☆VENS最少メンバーであるナギはまだ義務教育中であるため学校に行かなくてはならないらしい。実に献身的だなと瑛一は感心するとこだった。
『あぁ…』
台本に目を通していた瑛一は視線を隣に座っているナギに向けた。
『綺羅は家でゆっくりするらしいよ。大学の方も忙しいみたいだしね。』
綺羅は由緒正しき家系のお坊ちゃまなわけで、学業が最優先されるらしく、メンバーの中で一番自由がきいてないのではないかと感じていた。ナギの幼い顔が無言で瑛一の方に向けられた。
『俺は旅行に行く。』
その言葉にナギは"えぇー!?"と声をあげ、向かい側のソファーに座りおそらく大学に提出しなければならならいレポートに目を通している綺羅もゆっくり瑛一の方を見あげた。
『誰と?ね、誰と?』
恐らく綺羅も尋ねたかったに違いなかったことをナギがすぐさま聞いた。
『女と。』
『えー!?彼女居たの?』
綺羅も何も言わないが驚きを隠せないようで、体制が前屈みになっていた。
『あぁ。』
『いつからだ。』
『あー、やっぱ綺羅もそこは気になっちゃう感じ?』
『随分前からだ。』
アバウトな返答が気に入らなかったナギは眉を潜めた。
『随分前っていつー?』
『15歳。』
『うそ!?意外!!』
『意外だと?俺は他の女に目移りする程阿保じゃあるまい。』
長く細い足を組み直す瑛一にナギは更に質問を浴びせた。年齢的にもまだまだ幼い部分がある故、こういう話で一番はしゃぐのは彼だった。
『ねぇ、どんな人?何歳?誰?何してる人?』
『うるさいぞナギ。』
『そう煙たがらないでよー…。いーじゃん、教えてよ。』
『同い年で今、大学院で生物学やら物理学やら研究してる。』
『へぇ〜意外。同じ芸能界かと思ったよ。』
『まぁ一言で言えば不器用な奴だ。』
勉強以外は何もできず、料理や洗濯もまだまだで、こないだまで包丁も使えなかったし、人との距離感の取り方まで下手くそな名前は瑛一にとって不器用な人間に映るのだ。
『でも…可愛いぞ。なかなか。』
ハハハと高らかな声を上げる。
『うわー、瑛一が惚気たよー』
『当たり前だ。俺の女だから可愛いに決まってるだろ。』
口角を上げ、細長く白い指で軽くスマホを操作する。フォルダに入っているのは名前の寝顔写真だった。


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