君の泣き顔 | ナノ



「ちょっと、名前やってよ」
「いやいやあたしは無理だよ嫌だよ」
「私だって無理だよぉ…!」


とある日の出来事。洛山高校一年生です、私達。委員会決めてます、私達。そして何をなすりつけあってるかと言うと、クラスの代表委員。女子はあたしと友達しか残っていない。男女各一名ずつ出すことになっていて男子の方はもう決まっている。…赤司くんだ。いやあたし正直無理だよ。髪の毛赤いし眼も赤いよね?充血なんですか?あとたまにオッドアイになるの何なんですか?もう彼には恐怖しか抱いてない。ぶっちゃけ出来れば一番関わり合いたくない人種ナンバーワンなんですけど、どうすればいいんですかね。


「つーかあとお前らしかいねーんだけど、女子」
「し、知ってますよ…」
「早く決めてくんね?」
「……ッ」


いるいるいるよねクラスに一人はこういう仕切るヤツ。同い年のくせに上から目線とか何様なわけ?あ、俺様か?仕切り魔の言動にイラつきながらも一呼吸をいれ、何とか落ち着く。この作った右手の拳はどうすればいいだろうか。家に帰ってウサコ(ぬいぐるみ)にでもお見舞いしよう。


「…しょうがない、やるか」
「私負ける気しかしないから」
「なら負けた方が委員会やるってことで」
「えぇ…」
「問答無用!じゃーんけーん…!」
「ほい…!」
「…………。」
「…………。」
「………なん…だと……!?」
「よっしゃあぁあぁあ!」


この時の自分の運をこれほどまでに呪ったことはない。きっと後にも先にも。目の前にはガッツポーズで勝利を喜ぶ憎き友人の姿。え、負ける気しかしなかったんでしょ…?ならどうしてそこで勝っちゃうワケ……!?虚しく開かれた自分の掌を見つめる。もう、じゃんけんでパー出すのやめようかな…。軽くトラウマになるよコレ。


「んじゃ、女子の方は苗字に決定、と…」


先程書記に決定した男の子が各委員会のメンバーをサラサラとノートにまとめていて、その子が隣の人だった為チラリとノートを盗み見る。うわ、めっちゃ字キレーじゃん…!その綺麗な文字で代表委員男子 赤司征十郎 女子 苗字名前と書かれてあるのを見ると一気に絶望の淵へと追いやられる。これ確か一年間同じなんだよね…。しかも代表委員とか一番仕事ありますよね…?思わず口から長めの溜息が出てしまい隣の男のコに少しだけ心配された。

***

まこうなりますよね!放課後2人だけ残って仕事とかね!……ありがちすぎるだろ!心の中で煩いくらい独り言を呟いては突っ込む。そうでもしないとこの沈黙と雰囲気に呑み込まれてしまいそうで恐ろしい。となりの赤司くんはさっきから一言も言葉を発していなく、黙々と課せられた仕事をこなしている。見る限り無駄な動きなどないように思えた。…そう言えば、入試トップだったんだっけ。凄いよねー、トップ…かぁ。あたしとは無縁の言葉。あっでも小学校一年生の時に地域の早食い大会で一番になった事はあったな。


「……痛……ッ」
「………?」


や、やっちゃったーーー!紙で指を切っちゃうって最近はなかったのに、このタイミングで発動しちゃう?あたしどんだけタイミング悪い女なのよもう…。隣の彼にバレないように切った部位から滲む血を口で吸う。それほど深く切れてはいないから放っておけば勝手に瘡蓋になる程度。ちょっと痛いけどこれなら我慢できる。すると綺麗な細い指とその間に挟まれている絆創膏が視界に入る。


「……え…?」
「切ったんじゃないのか…?」
「あ、え、切り…っちゃいました…」
「だから、絆創膏」


切り…っちゃいましたって日本語としておかしいよなぁなんて突っ込む余裕なんぞその時のあたしにはなかった。初めてまともに聴いた赤司くんの声は想像していたよりずっと透き通っていて、今日何度口にしたか分からない『綺麗』。それしか表現が見つからなかった。「あり、がとう…」「…礼には及ばないさ」人を見かけで判断しちゃダメだって散々言われてきたけど本当にそうだなぁって痛感。じゃんけん、負けて良かったのかも…とか思ってみたりしてね。


相互文として失明のせあ様から頂きました。
こんなに素晴らしい文を当サイトに置いて良いのかぁぁぁ!!と恐縮しております。
これからも是非幸せの途中、愛岸共々よろしくお願いします!


Top
 →novel top
back to main
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -