20話
『どうしたの?サンジ兄』
急にそんなこと言い出すなんて。
「だってよ、アクリ、何だか楽しそうだったし……」
『まぁ、面白くはあったな……』
「!!」
そう言えばサンジ兄は目を見開いた。
「アクリはあ、あの二人が兄ちゃんのほうがいいのか?」
何だか泣きそうになってるサンジ兄に不覚にも俺は笑いを漏らしてしまった。
「むっ何で笑ってるんだよ!」
『っごめん、ごめん』
こほっとわざとらしい咳をして俺は微笑ましく、くすぐったい気持ちでサンジ兄を見上げた。
「サンジ兄、やきもち?」
『や、やき!?』
俺の言葉にサンジ兄は目を見開いて顔を真っ赤にした。
これは図星だな。
その顔が余計俺の笑いを誘う。
普段はすましたませた子供な感じのサンジ兄だけど、やっぱりまだまだ子供だな。俺がパティとカルネと仲良くしていたのが、兄として俺をとられたようで面白くなかったんだろう。
俺は言葉を失っているサンジ兄に目を細めて優しくいった。
『大丈夫だよ。俺にとって兄ちゃんはサンジ兄だけだから。』
「!!」
弟みたいなのもって言葉は飲み込んだ。
怒りそうだし。
俺のその言葉にさらに目を見開いたサンジ兄はいきなりプイっと顔を背けた。
「あ、当たり前だろ!?アクリの兄ちゃんはお、俺しかいないんだからな!!」
背けられた顔から覗く耳は真っ赤になっていて、その声からは必死に嬉しさを押さえているような響きがあった。
くすくすくすと笑いを漏らす俺にむっとわざと厳めしい顔を作ったサンジ兄は俺の手をとり「ほら、早くいこうぜ!!?」と引っ張りスタスタとあるきだした。
『うん。』
握られるその手の暖かさを感じながら俺はほかほかする気持ちを感じつつサンジ兄の後へと続いた。
20話