レースカーテン越しの陽光に手をかざすとそれはきらきらと安っぽく光った。
鼻からゆっくり空気を吸い込んだら柔らかい匂いがした。デイダラの匂い。
どきどきするのに、包まれているようで安心する。心地よい温かさのある彼の部屋。
「…その指輪」
「ん」
「どうしたんだよ、うん」
頭上でひらめかせていた手首を捕まえられた。
人差し指に嵌まったステンレスの指輪をデイダラはしげしげと眺めた。
そのうち指輪をつまんだり爪でつついたりしだしたので、わたしは好きにいじらせる。
「飛段さんにもらった」
「え」
するり、
指輪を指から抜き取ったところでデイダラはぽかんと手をとめた。
指輪はもともとサイズがあわなくて緩かったのだ。
「こないだ遊んだときに、飛段さんがUFOキャッチャーでとってくれたの」
「…うぇ。なんでまたあんなやつと」
「デイダラも誘ったけど、創作活動に夢中でついてきてくれなかったんですー」
そんなことは日常茶飯事だけどね。
「そんなことあったか…うん」
ほら覚えてない。
別にかまわない、わたしはそんなデイダラが素敵だと思うから。でも、
「飛段さんったらすごい一生懸命になってくれてね」
「へえ。意外だな」
「ね、意外でしょ。だから大切にしようと思って」
「うーん…」
「やきもちはだめだよ」
少しくらいの意地悪は許してほしい。妬いてしまうのはいつだってわたしだけなんだから。
デイダラはしばしもの言いたげに膨れっ面をしていたけれど、やがて不敵に口角を吊り上げた。あれ?
「まーいいさ。これはオイラが預かるからよ」
「あっ。ずるい」
ひゅん、ぱしん。
デイダラは指輪を軽く投げ上げて、落ちてくるのを造作もなくキャッチする。
びっくりするわたしに微笑むデイダラ。
挑発するように顎を少し上げて、また指輪を投げる。
ひゅん、ぱしん。
「返してほしいよな?」
お遊びなのはわかるけれど、完全にいじめっ子の笑顔だ。魅力的なんだけど、ちょっとむかつく。挑発には受けてたとう。
わたしも思わず、にやり。
「もちろん。返して」
「お前が取りにこいよ、うん」
「当然!」
言うが早いかわたしは指輪を握る手に正面から飛びついて、
しかしそこで思いがけないことに、ぐらり、彼の体が大きく後ろに傾いだ。
「おっと」
驚いたふりをしながらもやっぱり彼が不敵な笑みをやめなかったのを、わたしは、ちゃんと、見た。