あの小憎たらしい青いやつは、いつもにこにこしていて、突然ひょっこり顔を出したこの日もやはり、にこにこしていた。
「おねーさん!ボクと付き合って!」
「一体どうしたの水月くん」
「どうもしてないよ。突然こんなこと言って悪いとは思ってるんだけど、こんなやり方しか思いつかなかったんだよ」
「本気?」
「それはおねーさんが判断してよ、ボクはいつもこんな調子だからね」
「正気?」
「一回殴ってみる?いいよ。ボクおねーさんの拳なら何度でも受ける」
「よしわかった。殴らないから今すぐ帰ってね」
「ボクのどこが不満?」
「無理」
「全否定かよ!いや、ボクはやればできるいい男だよ。努力するし、尽くすし。せっかくだから今のうちにキープしとけば?」
「身も心も水っぽいから無理」
「心も?よく分かんないけどおねーさんのそういうとこ、ボクは好きだな。分かりやすい女の子は飽きるからね」
「歯が怖いから無理」
「あーよく言われる。痛くてディープキスとかできなさそうだよねって。でもボクはそういうの上手だから心配しないでいいよ。なんなら今から試しとく? 足腰立たなくしてあげるよ。おねーさん、一発でボクのこと好きになっちゃうと思うな」
「もうこれ以上好きになれないから無理」
「あっそうだ逆に痛ーいキスもありかもね。口ん中血だらけになってさ、興奮しそうじゃ……………………………………………………………えっおねーさん今なんて?」
「ぷっ」
「まじかよ!」
一転してほうけたような顔の水月がまたちょっと可愛いので、わたしから触れるだけのキスをあげた。あら戸惑ってるの、可愛い可愛いあんたほんと可愛いね。
そうからかうとすごく嫌そうに眉をぎゅっとして、わたしの肩をそっと掴んで、それから、水月はにこにこ笑った。悔しかったら自慢のキスいますぐ披露しなさいよ。あんたしゃべりすぎで待ちくたびれちゃった。
title:確かに恋だった