「ばあちゃんが毎朝4時に般若心経を唱えててこわい」
「…なに?平助呪われてるの?」
「……墓でも荒らしてきたのか?それはバチが当たるだろう」
「ちげえよ!ちゃんとばあちゃん生きてるし!」
「ちょっと。唾が飛んでくるんだけど」
「今さ、オレの家にばあちゃんが滞在してるんだけど、毎朝毎朝決まって4時に般若心経唱えてるんだけど、どうにかならないでしょうか」
「A.なりません」
「おい勝手に終わらせるなよ」
「そんなに気になるのなら本人に直接言えばいいだろう」
「この間抗議したらぽんかん投げつけてきた」
「なにそれこわい」
「ばあちゃんの般若心経のおかげで、オレ最近めちゃくちゃ早起きなんだよ」
「良いことじゃないか」
「般若心経で目覚める朝って精神的になんかくる」
「大体なんで平助グランマが滞在してるの?」
「じいちゃんと喧嘩したらしい」
「仲が大変よろしいようで」
「おまえら完全に他人事だよな」
「だって他人事だもん。ね、はじめ君」
「ああ」
「なんかオレ今すごく傷付いた」
「そうして痛みを知って、僕達は大人になっていく」
「なに良い感じに終わらせようとしてるんだよ!」
「だってどうでもいい。一緒に平助グランマと般若心経唱えてればいいじゃん」
「その光景想像してみろよ。こわいだろ。孫とばあちゃんが二人で般若心経って」
「ほのぼのじゃん」
「おまえの脳味噌どうなってんの」
「平助、人の習慣はそうすぐに変えることなどできないと思うが」
「はじめ君が言うと説得力あるよね。乾布摩擦毎日やってるんでしょ?」
「え、はじめ君まじで?」
「三歳の頃からやっているが何か?」
「はじめ君のどや顔いただきましたー」
「父も兄も一緒にやっているが何か?」
「斎藤ファミリーこわい」
「まあ、結論は、平助も一緒に般若心経唱えるってことでいいよね。はい、めでたしめでたしー」
「おまえ面倒くさくなったんだろ」
「最初からだるい」
「真顔で言うなよ。これでもマジで悩んでるんだから」
「精神を鍛えると思って耐えるのだ」
「はじめ君じゃないし無理だよ」
「ていうかさ、どうせすぐに平助グランマ帰るでしょ。平助のところのじいちゃんばあちゃんってめちゃくちゃ仲良いじゃん」
「年を重ねても仲むつまじいのは良いことだな」
「え、うん。………あれ、なんか丸く収まった」
「よかったじゃん」
「…(結局何も解決していないが)」
勝手に終われ。