疲れました。どうして私ばかりこんな思いをしなければいけないんですか。どうしてこんな思いをして生きていかなければいけないんですか。どうして、どうして、どうして。
独り言なんだか呟きなんだか発狂なんだか解らない、明確な意味を持たない言葉を早口でまくし立てた私に、春草さんはその端正な顔を僅かに、ほんの僅かに歪めた。
それからすぐにいつもの無表情に戻って、若草色の綺麗な双眼でじっと私を見据える。
「…一体どうしたの、君」
「もう疲れた。疲れました」
「何が疲れたの」
狂ったように疲れたと繰り返す私に、春草さんの眉間に皺がよる。
「……何かあったの?」
「何も無いんです。何も無いから、私には、だから」
「…………」
「…どうして、私だけがこんな思いをしなくちゃいけないんですか、」
ああ、もう本当に嫌だ。
自分が嫌だ、世界が嫌だ、春草さんを困らせるこんな自分が大嫌いだ。
「…しにたい、」
乾いた唇からぽつりと呟くと、春草さんが口を開いた。
「……でも、君はそれでも生きてるだろ」
春草さんの顔を見つめる。
彼は、少し怒ったような、泣きそうな顔をしていた。
春草さんのその表情を見て、なんだか私は泣きたくなって、それから本当に泣いた。
世界はどうしてこんなに残酷で、少しだけ優しいのだろうか。
(もう少しだけ、生きていられるかな)