ふと、目が覚めてしまった。
部屋の中は暗く、仄かに月明かりが差し込むだけで、まだ日は昇っていないようだ。
僕の腕の中で眠る少女は、穏やかな寝息を立てている。
その彼女の細い髪を静かに撫でると、彼女は小さく身動ぎした。
しかし相変わらずこの少女は眠ることを止めずに、完全に安心しきった様子で僕の腕の中で眠っている。
「…僕もこれでも男なんだがなあ…」
苦笑と共に小さく呟く。
腕の中の少女は小さい。それは、僕が想像していた以上に。
そのうえ、この少女は少しばかりそそっかしい。そして、ぼんやりしている。
だから、最初は妹のようなものだった。
世話の焼ける妹の面倒を見ているような、そんな感覚だったのに。
「…本当、どうしてなのだろうな」
妹のような存在が、いつしか何物にも変えがたい、大切な大切な存在へと変化していた。
愛しい、と。
そう思うようになったのは、いつのことだろうか。
「……芽衣、」
愛しい名前を呼べば、彼女はその幼さの残る顔に小さく笑みを浮かべた。
それすらも、たまらなくいとおしくて、大切で、僕はその赤い唇へと小さく口付けを落とした。
「…愛してるよ。良い夢を、芽衣」
夜はまだ長い。月はまだ沈まない。
愛しい温もりを腕に、僕は瞼を閉じた。