「鴎外さん、私のこと好きですか?」
「ああ、好きだよ。おまえを愛してる」
するりと頬を撫でられて、それから鴎外さんの腕の中に優しく閉じ込められる。
甘い煙草と、インクの匂い。
愛しい匂いに包まれて、それから私はゆっくりと目を閉じた。
「鴎外さん、大好き」
「…おまえは、本当に可愛いな」
鴎外さんの柔らかな唇が静かに私の前髪に押し付けられる。
嘘吐き。貴方が愛しているのは私じゃないくせに。
私のことを好きだと言いながら、貴方は違う誰かを想っているのでしょう?
「愛してるよ、芽衣」
そうして貴方は嘘を吐き続ける。
何よりも残酷で、誰よりも愛おしい貴方。
そんな貴女が私は愛おしくて愛おしくてたまらないのです。
(身代わりの愛でも、幸せだったの)