恋人が真性の変態だという件について 


菱田春草。
画家の卵。

俺には、悩みがある。


「春草さん!春草さん!お願いがあるんですけど」
「……何?というか、君なんか怖いんだけど。鼻息荒いし、目がぎらついてる」
「あのですね、語尾ににゃあって付けて喋ってください」
「い や だ」
「お願いです!」
「絶対に嫌だ。大体、そんなことをして一体全体誰が得をするっていうんだ」
「主に、私です!」
「うん、そうだろうね。君しかいないよね」
「春草さん、お願いです!」
「ちょ、怖いよ。息が荒い。ちょ、ちょっと……お、鴎外さーん!!」


……それは、俺の愛する恋人が変態だということだ。



「はははっ、随分とお疲れのようだな。春草」
「……鴎外さん、笑い事じゃないですよ」
「何を言うのだ、春草。それだけ、小リスちゃんから愛されているということだろう。羨ましい限りだ」
「それが普通の愛情でしたら喜んで受け止めますよ。彼女の愛は、なんかもう色々違うんです」
「はっはっはっ、そう惚気るな。お前達は本当に仲が良いなあ」
「……鴎外さん、楽しんでますよね?」

唯一、彼女を止められそうな鴎外さんは完全に他人事で、俺のこの状況を楽しんでいる。(ニヨニヨしている顔の、なんとも腹立たしいことか)
きっと、フミさんに言ったとしても彼女の味方になることが容易に想像できる。(女性同士って恐ろしいほどの結束力と力を持っていることを俺は知っている)

ああ、信州の御父さん、御母さん。俺は一体どうすればいいのですか。切実に。


「春草さん!」
「……何?」
「春草さんって、本当に鴎外さんと仲良しですよね」
「…いや、仲良しとは違うと思うけど」
「やっぱり、鴎春っていいですよね……!」
「……………は?」

きらきらと目を輝かせて俺を見つめる彼女に、「あ、こりゃあもう手遅れだな」と。(可愛いんだけどね)

「本当は鴎外さんのことが大好きなのに、素直になれないツンデレの春草さんとかもう、私を萌え殺す気ですか!」
「ごめん。君の言っていることが全く理解できないよ。俺に通じる言語で話してもらえると非常に有難いんだけど」
「でもでも!ツンデレじゃなくても、鴎外さんの前でだけデレデレになって甘える春草さんも物凄く可愛い!」
「うん、わかった。君は目玉だけじゃなくて、脳味噌から腐りきっているんだね。よくわかりました」

どうしよう。
最近、ますます彼女は変態に拍車をかけてきているように思える。
これは、恋人として早急に処置しなければならない問題だ。

「……ねえ」
「はい?」
「君の頭の中では俺はどんな(トンデモ)設定になっているかわかんないけど、俺は君の恋人だよ」
「それは、わかっています!」
「そう。だったらさ、鴎外さんなんかじゃなくて、誰に甘えたいかわかるよね?芽衣」
「えっ?え、え、ちょ、春草さん?」
「もうそんな鴎春だかなんだか訳のわからないものなんかより、生身の恋人がいるでしょ?ここに」
「しゅ、春草さ」
「だったら、この目の前の俺自身に『萌え』させてあげるよ」
「え、え、ちょ、ちょっと」
「覚悟した方がいいよ」
「ちょ、春草さん?春草さーんっ!?」


鴎外さん、故郷の御父さん、御母さん。
恋人を正常な人間にするため、菱田春草は全力で頑張らせていただきます。
……色々な意味で。



「…春草さん、私間違ってました」
「え?(やっと、人間に戻ってくれたか…)」
「春草さんは受けオンリーでは無かったんですね」
「…………は?」
「春鴎!春鏡!時代は、春草さんが攻めですよね!」
「……はあ!?」
「春草さん攻め、なんて素敵なんでしょう!あ、あと語尾ににゃあって付けてください!お願いです!方言でもいいですよ。方言って萌えますよね!お願いします、春草さん!」
「全力で拒否する!!!」


嗚呼、御父さん、御母さん。
俺が頑張った結果、恋人は真性の変態になってしまいました。


「春草、小リスちゃんとはどうだい?」
「もう諦めました」
「ほう?春草もそっちの世界へ?」
「もう半分連れてかれてます」
「はははっ、お前達は本当に仲が良いんだなあ!」
「……もう、手遅れだったんです」
「いいじゃないか、春草。世の中には様々な愛の形があるものだ」
「彼女の愛は随分と変態的ですがね」


(まあ、それでも好きなんだけどさ!惚れた弱みってやつで)





な、なんだこれ…
ちなみに、信州出身ですが信州の方言はそこまで萌えないです。
 
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