いっそのこと殺してくれたらいいのに 


苛々する。

言いかけて、呑み込んだ言葉。
苛々するんだ。
鴎外さんが好きな君に。


「…どうすればいいんですか…」
「……何が?」
「鴎外さんには、好きな人がいるのに、」

知らないよ、そんなこと。俺の方が聞きたいくらいだ。
蜂蜜色の双眼から大粒の涙をぼろぼろと流しながら彼女はメソメソと泣いている。
ああ、鬱陶しい。
どうして鴎外さんのことで泣くんだ。
泣くくらいだったら、俺を好きになったらいいのに。

「鴎外さんは今もあの人のことを想っているんです、」
「ああ、そう。じゃあ諦めるの?」
「……諦められないから、困ってるんですよ」

苛々する。
どす黒い感情がすぐそこまでせり上がっている。
そうだよ、俺だって諦められないから困ってるんだ。
君じゃなきゃいけない理由なんて何一つ無いのに。
どうして君は、こんなにも俺の心をかき乱すんだ。


体中の水分が無くなってしまうんじゃないかってくらい彼女は涙を流し続ける。
俺だったら、きっと君を泣かせないのに。

痛い、痛い、痛い。胸が痛い。
人を好きになることがこんなに辛くて苦しいなら、こんな感情消えてしまえばいいのに。

ああ、痛いよ。
泣いている彼女を見て、なんだか俺まで泣きたい気分になってきた。


(こんなに苦しいのなら、もう死んでしまおうか)


 
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