月夜の獣 



満月の夜は、獣が出る。


「っん、」

ちゅう、と首筋を吸われる。ぴりりとした痛み。明日にはきっと、私の首筋には真っ赤な痕が散らされているのだろう。
熱い吐息がかかる。
何度も何度も首筋を吸われる。

「…芽衣」

低く名前を耳元で囁かれて、それから私の顎を軽く持ち上げて鴎外さんは口付けた。

「ん、んんっ…、」

深い深い口付け。
口内に鴎外さんの熱い舌が侵入してきて、そのまま私の舌を絡め捕る。
あまりにも長い口付けに、苦しいんだか気持ちいいんだか、いよいよわからなくなって私は鴎外さんの肩を押した。
すると鴎外さんは案外簡単に唇を離して、互いの唾液で濡れた唇をぺろりと舐めた。
その仕草まで綺麗なものだから、鴎外さんはずるい。

「…芽衣、好きだよ」

私の右頬に大きな手が添えられて、黄金色の熱っぽい瞳に見つめられる。
愛を囁く言葉はこれ以上ないくらいに優しいのに、その瞳はまるで獲物を見つけた肉食獣のようにぎらぎらと獰猛な光を放っている。

ーああ。
私は食べられてしまうのだ、この誰よりも愛しい獣に。

再び、鴎外さんに唇を塞がれる。
熱に浮かされたこの頭では何も考えることができなくて。
この人になら食べられても良いと、私はゆっくりと瞳を閉じた。

 
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