あの人があんなに綺麗だなんて知らなかったの 



その赤くなった瞳は、まるで兎のようだった。


「…どうしたのさ、そのみっともない顔」
「……音二郎さんに、振られました」
「ふぅん」

小さな声でそう言った彼女の瞼は赤く腫れて、頬には涙の跡が残っている。泣き過ぎたその双眼は充血して赤くなり、それはなんだか兎を連想させた。

「…その顔、何とかしなよ」
「…ごめんなさい、無理です、できません」

緩く首を横に振るう彼女の瞳には、じわりじわりと涙が滲んできている。
それから、ぽつりと、雫が彼女の柔らかな頬に零れ落ちた。

「……そんなに、好きだったの?」
「はい、大好きです」
「…本当は無理だってわかってたんだろ?」
「…はい、それでも好きでしたから」

ぼろぼろと蜂蜜色の双眼から涙を流す彼女は、失恋したくせに、やけにすっきりとした表情で。
綺麗だった。

「…本当にアンタって馬鹿だよね」
「私が一番そう思います」
「……でも、頑張ったんじゃない」

そう呟けば彼女は一瞬驚いた顔をして、それから両手で顔を覆ってわんわんと大声で泣き出した。



(今まで見た中で、今日のアンタが一番美しかったよ)


 
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