それでも地球は廻り続ける 




※病んでる芽衣






「…しにたい、なあ」

ぽつりと呟いた。
次の劇の台本を読んでいた音二郎さんは、一拍置いてから、ゆっくりと顔を上げて、私を見つめた。

「……どうした?」
「いえ、何も無いんですけど」
「何も無いってことはないだろ」

藤紫色の綺麗な瞳が私を真っ直ぐに見据える。
その瞳は、真剣だった。

「本当に、何も無いんです」
「…芽衣、」

音二郎さんの視線に耐えきれず、私は静かに目を伏せた。
ああ、どうかその綺麗な瞳に私を映さないでください。
貴方は、私には美しすぎるの。

「…私、未だに自分のことを思い出せないし、思い出したとしても、私の生きてきた世界は良い場所だったとは限らないし、」
「………」
「…私には何も無いんです。私は、他の人のように何も持っていないんです。だから、」
「芽衣」

名前を呼ばれる。
音二郎さんを見つめると、彼は笑いもしなかったし怒りもしなかった。
ただ、真っ直ぐに私を見つめていた。

「この世界は、生きづらいよなあ…」
「……はい」
「それでも、俺は、おまえがいなくなったら悲しいよ」
「………」
「だから、俺のためにもう少しくらい生きろよ」

そう言って、彼は寂しそうに笑った。

その言葉に何だか私は泣きたくなって。
彼の言葉と表情で、まだ私はもう少し生きられそうな気がした。



(…明日も、笑えるかな、)


 
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