僕は、彼女がまだ幼い時からずっとずっと傍にいた。
彼女が誰よりも優しくて、そして誰よりも傷付いてきたことだって僕は知っている。
僕は、彼女が大好きだった。
だから、彼女には幸せになってほしいと思ったのに。
「……どうして、僕なのかな」
それは苦笑と共に吐き出された、苦い呟きだった。
僕の胸元にしがみついているのは、大好きな彼女。
ずっと、触れたかった温もり。
ねえ、どうして。
君には鴎外さんや音二郎さんとか、僕なんかよりも優しくて素敵な人がいるのに。
君のような子は、僕みたいな物の怪を好きになっちゃいけないのに。
「……芽衣ちゃん」
僕は君とずっと一緒にいることはできない。
日が昇れば、消えてしまう。
夜の中でしか君と生きれない。
だから、僕は。
幼子に言い聞かせるようにそう言葉を紡げば、彼女は駄々をこねる子供みたいに首を横に振るう。
それから更に僕に強くしがみついて、泣きじゃくりながら言った。
「…私は、それでもチャーリーさんと生きたい…っ、」
「ーーー」
ああ、彼女には敵わない。
彼女の言葉だけで、どうしてこんなにも心が揺さぶられるのだろう。
苦しくて、切なくて、嬉しくて、愛しくて、泣きたいくらいだ。
朝日が昇って消えてしまう存在でも、こんな僕でも、彼女が何度でも待っていてくれる。
それはなんて幸福で、満ち足りているのだろう。
小さな背中に腕を回して、僕は彼女を強く強く抱きしめた。
もう二度と彼女が傷付かないように、決して手放さないように。
僕が彼女を幸せにするために、強く、抱きしめた。