その温度も感触も全てが愛おしいのです。 




最近わかったことが一つある。
わかったことというか、薄々は気付いていたことなのだけど。

鴎外さんはキスの回数がとにかく多い。



「芽衣、」
「ん、」
「ほら、もう一度」
「んぅっ、」

ちゅ、ちゅ、と何度も何度も触れるだけのキスを落とされる。
触れるだけかと思いきや、いきなり深い口付けに変わったり。

キス魔、とは違うと思う。
彼は私が見ていた限りでは春草さんやフミさんなど、私以外の人にキスはしていない。
……まあ、春草さんになんかキスでもしたら色々な意味で怖いし、勿論私以外にキスなんてしてほしくないけど。

「…芽衣、好きだよ」
「んっ、」

そんなことを考えている間でも繰り返しキスを落とされる。
気持ち良くて心地良くて、鴎外さんの背中に手を回して抱き締めると、彼も優しく私を抱き締め返した。

別にキスが嫌いとかそういうわけじゃない。
むしろ鴎外さんから与えられるキスは、心が満たされて幸せで大好きなんだけれど。
でも、鴎外さんのキスの回数は本当に多いと思う。
朝晩のキスなんかも私が眠くてもお構いなしにこれでもかというくらいしてくるし、もうおはようやおやすみのキスっていうレベルじゃない。
昼間は昼間で、とにかく二人きりになればキスをしてくるし、元からスキンシップが多い人だったけれど、最近はもうスキンシップの域を越えていると思う。

「……鴎外さんって、キス好きですよね」

鴎外さんの唇が離れた時にそう呟けば、鴎外さんは何度か長い睫毛を瞬かせた。
それから顎に手を当て考える仕草をして、納得したように頷いた。

「言われてみればそうだな」
「言われてみなくてもそうです。鴎外さんが朝昼晩構わずキスをしてくるせいで、私の唇が常にふやけた状態になりますよ」
「……おまえは、僕とのキスは嫌かい?」
「嫌じゃないです」
「ははっ、即答か」

小さく笑って、鴎外さんは私の髪を静かに撫でた。

「…まあ、僕は誰彼構わずにキスをしているわけでは無いが」
「知っています。もしそうだったら私泣きますよ。色々な意味で」
「……僕はね、おまえとのキスがすごく好きなんだ」
「私も好きです」
「ふふ、ありがとう。…何故僕が芽衣とのキスが好きかわかるかい?」
「恋人だから、ですか?」
「まあ、それは勿論だが、」

くすりと、鴎外さんは笑って、それから本日何度目かのキスを私の唇に落とした。

「ん、う」
「……おまえは自分では気付いていないだろうが、キスをしている時にとても愛らしい声と顔をしているだろう」
「え?…っ、ん」
「ほら」

目を細めて鴎外さんが私を見つめる。
薄い唇は綺麗な弧を描いている。

「…おまえがあまりにも愛らしいものだから、襲いたくなるくらいだ」
「言っておきますけど、まだ昼間ですからね。まだ昼間ですからね。大事なことなので二回言いました」
「ははっ、そんなこと十分承知しているよ。白昼堂々、婦人を襲うような真似なんて僕のような紳士がするわけないだろう」
「…紳士は夜中でも襲いませんよ?」

なんだか身の危険を感じてそう主張すると、鴎外さんはその端正な顔に優雅な笑みを浮かべた。

「…そうか。ならば言い方を変えようか。おまえを愛でよう。…ふむ、愛でるという言い方なら昼間でも健全だな」
「どこがですか!色々と不健全な気がしますけど!」
「それは気のせいだ」
「気のせいなんかじゃ……っ、ん」
「…そんなに喧しい口なら塞いでしまうよ?おまえは大人しく僕に愛でられなさい」

にこりと笑った鴎外さんの顔は、それはそれは綺麗でした。



(もう塞いでいるじゃないですか!)
(…さて、どうやって愛でようか)
(鴎外さんのそのスルースキル私にも分けてくれませんか)







色々となんだこれ\(^o^)/
キスのゲシュタルト崩壊しそうでした。
 
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