鏡花さんはどこまでも綺麗で、そして脆い。
「芽衣、芽衣、お願いだから、僕から離れないで」
私の肩に鏡花さんの細い指が食い込む。
繰り返し私の名前を呼ぶ鏡花さんの声は震えていて、まるで何かに怯えているみたいだ。
「芽衣、好きだ。好き、だよ。僕は、芽衣が、」
はらり、と新緑のように青く綺麗な彼の二つの瞳から涙が零れ落ちた。
「鏡花さん、私はここにいますよ」
私よりも背丈の高い、それでも華奢な鏡花さんの背中へ両腕をまわして彼を抱き締めた。
鏡花さんが何に怯えているのか私にはわからない。
鏡花さんの不安も、恐怖も私はきっと一生わからないままなのだろう。
だけど、
「…鏡花さん、愛していますよ」
鏡花さんはどこまでも綺麗で、そして脆い。
だけど私は、そんな鏡花さんが何よりもいとおしい。
(これが私たちの愛だと言ったら、世界は笑うでしょうか)