終わりなんて知りたくなかった 



※死ネタ、千鶴が病んでる。




ねえ、沖田さん。

私、間違っていたのでしょうか?
鬼である私が、幸せな未来を望んではいけなかったのでしょうか。

ねえ、

沖田さん、ねえ…!


彼は答えてくれない。
私の腕の中にいる沖田さんは何も答えてくれない。

「沖田、さん」

風が頬を掠める度に、生臭い血の臭いが鼻孔を刺激する。
濁った瞳と、真っ赤に染まった冷たい身体が、彼はもう生きていないことを伝えている。

「沖田さん、…!」

ねえ、答えてください。
目を開いて、私を見て。
いつもみたいに意地悪な、でも優しい笑顔を見せてください。

私、沖田さんのように強くはないんですよ?
私に遺された孤独に耐えられるわけないじゃないですか。
私には、沖田さんがいないと駄目なんです。

だから、目を覚まして。お願いですから、目を覚ましてください。


もう、彼の身体が動くことは二度と無い。
温もりが宿ることも、声を発することだって無い。
貴方は、私を置いて逝ってしまうんですか?

「沖田さん、」

沖田さん、私は貴方以外愛することができなくなってしまったんです。
私をこんな風にしたのは沖田さんですよ?

「沖田さん、少し待っていてください。
私も、すぐに行きますから、」

嗚呼、私は笑えているのだろうか。
笑顔さえも、醜く歪んでしまって。

「沖田さん、大好きです」

私は腰に差した小太刀を抜き取り、それからそれを首筋へ押し当てた。

「今、会いに逝きます」

そう言って私が最期に見たものは、誰よりも愛しい貴方の濁った綺麗な瞳だった。


(ああ、なんて罪深い生き物!)
 
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