心中 




「心中、しようか」

不意に僕が呟いた言葉に、千鶴ちゃんは洗濯物を畳む手を止めて、大きな瞳を何度も瞬かせた。

「…って僕が言ったら、どうする?」

にんまりと笑って、彼女の反応を窺う。
真面目な千鶴ちゃんは、からかうとそれはもう面白い反応をしてくれるため、期待しながら彼女を見つめる。

「…良いですよ」

ー千鶴ちゃんの反応は、僕が想像していたものと、だいぶ、いやかなり違ったものだった。

「……え?」

声が、少し引きつった。
千鶴ちゃんはいたって真剣だ。
曇りのない琥珀色の瞳を真っ直ぐと僕へ向ける。

「沖田さんが望むのなら、構いませんよ?」
「……ええと、冗談じゃないよね…?」
「はい。私は本気です」

そう言って、彼女は再び洗濯物を畳む作業に取り掛かる。
それから、千鶴ちゃんはぽつりと呟く。

「…だって、一緒に死んでくれるんでしょう?」
「…まあ、心中だから」
「だったら、いいんです。沖田さんが私を独りになんかしないってことでしょう?」

顔を上げた彼女は、その顔に穏やかな笑みを浮かべていた。
それは、とても綺麗な、笑み。

「…うん、そうだよ。君を独りになんかしない」
「じゃあ、もしものことがあったら一緒に死んでくれますか?」
「いいよ、君となら」
「……沖田さん、好きです」
「知ってるよ。僕が思っていた以上に君が僕のことを好きなんだって今、よーくわかった」

心中。
それは僕にとってどこか甘美な響きを持っていて。
彼女となら地獄の底だろうが、どこだろうが、どこまでも一緒に行けるような気がした。
 
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