子供ができました。 


「子供が、できました」


私の言葉に千景さんは何度も瞬きをした。
切れ長の瞳を大きく見開いて、私の顔を見つめる。

「…本当か?」
「はい、本当です」
「…俺の子供か?」
「千景さん以外に誰がいるんですか!」
「あ、ああ、そうだな」

どきどきとしながら千景さんを見つめ返す。
緊張して、掌にしっとりと汗が滲む。
彼は、喜んでくれるだろうか。

「…俺とおまえの子供……」

そう呟いたと思うと、彼は突然私に近付いて、それからきつく抱き締めた。

「ち、千景さん?」

思いもよらぬ彼の行動に少し狼狽えながらも、彼の大きな背中へと腕を回す。
千景さんは更に強く私を抱き締めて、それから呟いた。

「ありがとう」

彼の唇から紡がれたその言葉と、その腕の温もりに、不覚にも涙腺が緩んで、ぽたりと目から涙が零れ落ちた。

「ありがとう、千鶴。俺の子供を産んでくれ」
「…当たり前です。千景さんとの子供なんだから、駄目だって言われても産みます」

泣きながらそう言って、身体を少し離して千景さんの顔を見ると、彼も泣いていた。
緋色の瞳からはぽたぽたと涙が流れていた。
それは、初めて見る表情だった。

「千鶴、泣くな」
「千景さんだって泣いてるくせに」
「これは、嬉し泣きだ」
「私は、幸せ泣きです。幸せ過ぎて、涙腺が緩くなったんです」
「ならば、俺も幸せ泣きだ。幸せ過ぎて、どうにかなりそうだ」

千景さんの涙を見て、さらに私の目からは涙が溢れてきて、それを見た千景さんの目からも涙がさらに溢れてきて。

それを見て、私達は泣きながら笑いあった。


(子供の名前を考えなければな)
(ふふ、まだ男か女かわからないのに気が早いです)





風間夫妻を泣かせたかっただけなんです。
 
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