それでも君は何度も僕を掬うのだろう。 



化け物になっていく自分が怖いんだ。
血に狂ってしまうのが、怖いんだ。

震える声で絞り出したオレの言葉に、千鶴は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。

ああ、ごめん。
ごめん、千鶴。
でも、オレは怖くて怖くてたまらないんだ。

「オレは、どんどん人間じゃなくなっていく。だってさ、おまえの血が美味いんだ。血が、血を見るだけで、オレは、」
「平助君、」
「どうしよう、千鶴。オレ、このままじゃ、どうしよう。このままじゃ、オレはどんどん化け物になっていく。どうしよう、どうしよう」
「平助君!」

支離滅裂な言葉を繰り返すオレに、千鶴は悲痛な声を上げた。
大きな瞳は、濡れていた。

「…怖い」

ぽつりと呟いた。
情けないくらいに震えて、引きつった声だった。

「このままじゃオレ、きっといつかおまえだって傷つけてしまう」
「平助君…」
「オレは、狂いたくない。おまえを傷つけたくない…!」

そう叫んだと同時に、ふわりと抱きしめられた。
背中に回る細い腕と、心地良い温もり。
千鶴がオレを抱きしめていた。

「平助君、大丈夫だよ」
「千鶴…」
「大丈夫だから。平助君は独りじゃないから」

ぽんぽんとゆっくりとオレの背中を叩く千鶴。
それはまるで子供をあやすように。
それがひどく心地良くて、居場所を求めるように千鶴の小さな身体をぎゅうっと強く強く抱きしめた。

「千鶴、」
「大丈夫だからね、平助君。私がずっと傍にいるから」
「うん。ずっと、傍にいてくれ。千鶴、ありがとう」

ぼろりと涙が零れ落ちた。
こんな情けない姿は見せたくないと思ったが、一度零れた涙は止まることを知らずに、ぼろぼろと次から次へと溢れ出してくる。

「ありがとう、千鶴」

返事の代わりに、千鶴の細い腕に力が込められた。


千鶴、弱くて格好悪いオレでごめん。
こんなオレを受け止めてくれてありがとう。


「千鶴、ありがとう、」



(おまえはいつも、何度でも俺を救ってくれる)

 
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