私は貴方に憧れていました。
艶やかな長い黒髪や、切れ長の瞳の整った容姿。
その外見に見合うだけの内面の美しさも、全て私の憧れだった。
貴方はとても厳しい人だったけど、それ以上に自分にはもっと厳しかった。
そして、誰よりも優しい人だった。
私は貴方のようになりたくて、ずっとずっと貴方の背中を追い続けた。
たとえ、貴方が私の想いに気付いてくれなくても、傍に置いてくれればそれだけで幸せだったのだ。
なのに、
「…酷いですよ、土方さん」
貴方は残酷な人だった。
私の想いに気付いていたのなら、一緒に連れて行ってくれれば良かったのに。
私は、貴方と一緒に居られるなら他に何もいらないというのに。
「……酷いですよ、」
私を置いて函館へ行った彼は、そのまま二度と帰ることはなかった。
大鳥さんから聞いた話では、彼は戦死したらしい。
「……土方さん」
貴方はまた遠くへ行ってしまうんですね。
私の手の届かない、遠い遠い場所へ。
私は一生貴方に追い付くことができないじゃないですか。
そんなことを思ったって、あの美しい人にはもう私の言葉が届かない。
そうして私は静かに泣いた。
(死ぬことより貴方のいない世界で生きる方が苦しい)