来世にて、会いましょう。 




心臓を刀が貫いて、目の前が真っ赤になった。

嗚呼、俺が全てを失ったあの日も炎で真っ赤だったと、何だか頭はやけに冷静なのが気持ち悪かった。



人間の手によって一族を殺された俺は、土佐の南雲の家に引き取られた。
女鬼を必要としていた南雲家は、双子のハズレを引いて大激怒。
奴等は俺に暴虐の限りを尽くし、幼い俺の心を歪ませるには十分なほどの、暴力を与え続けた。
そんな糞みたいな奴等を全てぶっ殺して当主の座を奪い取り、やっと自由になった俺はただ一人の妹、千鶴に会いに行こうと考えた。

南雲家の奴らに酷いことをされていたって、俺は千鶴のことを一日も忘れたことはなかった。
泣き虫なおまえのことだから、きっと一人で泣いているに違いない。

最初は、一目千鶴を見て、俺の大切な妹が生きているのかさえ分かれば良かった。

だけど、

数年振りに会った千鶴は、俺のことを忘れて、俺じゃない男の隣で幸せそうに笑っていた。


俺は、おまえのことを一瞬だって忘れたことは無いのに、おまえのことをこんなにも大切に思っているのに。
どうして、どうして、どうして。

激しい憎悪に包まれた心は、取り返しのつかない程に歪んで。


めちゃくちゃに傷付けてやろう。


そう思った。



口からは真っ赤な血が溢れ出した。
やけに心臓の音だけがうるさく鳴り響く。
焦点が定まらず、視界がぐらぐらと揺れている。

…ああ、千鶴はどこ?

ぼんやりとした視界の中、何とか目玉を動かして千鶴を見つけた。

「……薫、」

千鶴の声が聞こえて、ぽつりと温かい雫が俺の頬に一粒零れ落ちた。

おまえは、こんな兄のために泣いてくれるのか。


俺は俺を忘れたおまえを許すつもりは無い。
おまえは大切な奴らを傷付けた俺を許さないだろう。

でも、もしも生まれ変わって、もう一度双子として生まれたのなら。

その時は許してあげる。
俺は、俺の犯した罪を一生をかけて償おう。


現世では、ばいばい。
来世で、待ってるよ。


そこで、俺の意識は暗転した。



(さようなら、俺の愛しい妹)
 
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