こういうとき、少し嬉しそうに、けれど静かに笑う辛島くん。

その少し照れたような顔を見ると、こちらまで嬉しくなってしまう。

「今日も、『呼び出し』があったのね」

無理は、しないでね。

そう、言いたいけれど。
そんな言葉を今言っても仕方がないことはわかってる。
うるさがられても嫌だし・・・他のことを言わなきゃ。

「川口さんは、元気だった?最近、あまり顔を見ていないの」

「あぁ、相変わらず悪人面でばりばり働いているよ。最近寝不足なのか、目の下にすっごい隈ができてた」

うひゃひゃ、と肩を揺らして笑う辛島くん。

声は綺麗なのに、あまりにも品のないその笑い声が最初は印象的だったのだ。

今ではもうすっかり慣れてしまったけれど。


「そうなのっ?大変そうね・・・最近見なかったのは、忙しいからだったのね」

「でも、今日で一段落ついたはずだから。またしばらくは・・・」


言いかけて、はっと何かに気付いたように辛島くんは口を塞いだ。
何だろう。
聞いてはいけないかしら。
でも、気になる!!


「・・・しばらくは?」

「・・・・・・っあ・・・いや。しばらくは・・・」


驚いたようにこちらを見ると、すぐに辛島くんは視線を伏せてしまった。

そして、またすぐに、綺麗に笑うのだ。

「しばらくは、川口さんもゆっくり眠れるんじゃないかな?」

さっき言いかけたのは、そうではないのだろうと・・・思うのだけど。

でも、じゃぁ何かと聞かれたら答えられない。


「そう。それなら安心ね。隈があったら、余計に恐い顔だと言われそうだもの」

「うん、悪人面に拍車がかかってた。・・・途中、救出した子供が川口さんを見て大泣きしてしまってね。あれは可哀想だったな」

「えぇ!?そ、そんなことがあったの・・・」

「その後、僕を見てますます泣いてしまったんだけどね」

「えぇぇ!!?」






うひゃひゃひゃひゃ。






言われてみれば、辛島くんが『お仕事』の時につけている狐面は恐いのかも知れない。
でも・・・

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