「辛島くん」
放課後、窓の外が薄闇に染まり始めた頃。
保健室前の廊下で辛島くんを見つけた。
本日初。
放課後なのに、本日初。
もう慣れっこだけど。
辛島くんはフードの白いファーに埋もれるようになりながら振り向いて、綺麗に笑った。
「国府さん。今帰り?」
「そうなの。宿題をここで片付けてしまおうと思ったら、遅くなってしまって」
半分嘘だけど。
辛島くんに逢えないかな、と思って、残ってたんだけど。
「そうなんだ。偉いね国府さん。宿題・・・何が出てたかも思い出せない」
全然悪びれずに笑いながら言うと、辛島くんは鼻をつまんだ。
「もう暗いし、送るよ。一緒に帰ろう」
きゃーーーーーー!!
残ってて良かった!!
「・・・っありがとう!」
久しぶりだわ!
辛島くんと帰るの!
ついつい頬が緩んでしまう。
気をつけなきゃ。
変な人だと思われないように・・・!
・・・と、喜んでしまったけど。そういえば。
「辛島くん、具合が悪いのじゃないの?」
控えめに問いかけてみると、辛島くんは少し驚いた顔をして、すぐにまた笑った。
「そういうわけじゃないんだ。少し、肘を擦り剥いてしまっただけで」
「えっ!肘!?大丈夫なの?」
「・・・大丈夫だよ。ありがとう国府さん」
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