今日は朝から1日中そわそわしていた。全く実に僕らしくない。
2月14日はバレンタインデーというらしい。ここイギリスでは男性が女性にプレゼントを渡す行事らしい。何故全部らしいかというとルシウス先輩に聞いたからだ。あいつの話は信憑性が薄いのでらしいという事にしておく。まぁ先日のホグズミードで浮かれたアホ共がプレゼントを選んでいたのでそういう日で間違いないのだろうけど。
それはさておき、だ。何を思ったのか僕はホグズミードで名字にプレゼントを買ってしまったのだ。あぁこれで僕は立派なアホの仲間入りだな。そんな事を考えながら机の上にのっている箱を見た。白い包装紙にピンクのリボン、いかにも女性へのプレゼントという感じがしてなんだか全身がむずがゆい様な妙な気持ちになった。
名字はいつだったか耳当てが欲しいと言っていた。しかし毎回毎回ハニーデュークスでお菓子を大量買いという無駄使いをしてしまっているので買えていないみたいだった。そこで僕はプレゼントに耳当てを買ってやったのだった。名字の趣味なんかわからないし、自分のセンスにも特に自信があるという訳でもないので、茶色のファーの無難な感じの物にした。名前がこれをつけている所を想像する。うん、似合うと思う。
ただ一つ問題があった。もうすぐ授業が全て終わるというのに僕はまだ名字にプレゼントを渡せていないのだ。僕と名字は寮が違うから確かに会う回数は少ない。けれど渡せるタイミングはあった。食事の時間や移動の時間や合同授業の時間。さっきの授業なんて席が隣だったのにエバンスとあのくそ忌々しいポッターがバレンタインをどう過ごすかという下らない話を聞かされて終わってしまった。
そもそもこんなこと柄じゃないんだ。いっそ渡さないでいようか、そう考えてしまうくらいなんだか恥ずかしかった。ため息を一つつく。あの箱に入っている耳当てをつけた名字をやっぱり見たい。ごたごた考えていても仕方ないとりあえず探しにいってみよう…。そう思って部屋からでると談話室でレギュラスに会った。見られては不味い気がして急いで箱を自分の後ろに隠した。その動作を見たレギュラスがやれやれといった顔をした。
「スネイプ先輩まだ名前先輩に渡してなかったんですか?」
「なっ何で…!」
「この間普段行かない様な店で先輩を見かけたんでこっそり見てたんです。それ名前
先輩にプレゼントですよね?」
一人で耳当てを選んでいる所を見られてたなんて恥ずかしい以外の何物でもない死にたい…というか何でこれが名字宛てだって知ってるんだ。
「名前先輩ならさっき中庭にいましたよ?早くしないと余計渡し辛くなりますよ」
「お前に言われなくても渡す!」
恥ずかしさやら悔しさやらでそういい捨てた僕は談話室から早歩きででていった。なんだかあいつに上手くのせられた気もするがこの際目をつぶっておこう。何はともわれ、渡しにいくきっかけが出来たのだから。
「名字!」
中庭にでると一人で歩いている名字を見つけた。
「スネイプどうしたのそんな急いで、珍しいわね」
「その…だな…これ…」
白い箱を名字に差し出す。首をかしげながらも名字が箱を受け取った。僕が持っている時はただただ似合わないだけのピンクのリボンの箱も名字が持つとやけに可愛らしいものに見えた。
「名前〜教室に忘れものしてたわよ」
すると名字の忘れものを届けにきたらしいエバンスがこっちに走ってきた。タイミングが悪い…というか僕を見てにやにやするのやめてくれ!
「ありがとうリリー」
そう言って名字が受けとったものに僕は目を奪われた。名字がエバンスから受けとっていたのは真っ黒な耳当てだった。
「で、これ私によね?何かしら」
校舎へ戻って行くエバンスに手をふって名字が箱に向き直る。
「違うんだその…!」
頼む!あけないでくれ!何だか僕は急に一人で舞い上がっていた気持ちになって、この場から消えてしまいたかった。ちくしょうアホの仲間入りなんかするんじゃなかった!
「これって…耳当て?わー可愛い!つけてみてもいい?」
「どう?似合う?」
「あぁ…」
耳当てをつけて嬉しそうに笑う名字似合わない訳ないだろ。人がどれだけ必死い選んだと…いやそうじゃなくて!
「でも…いらないみたいだな」
「どうして?すごく嬉しいのに」
「耳当て…もう持っているだろう」
「そうだけど…セブルスから折角貰ったのにいらないなんて事ないわ!」
名字は少し考えた後、閃いた様に僕を見た。
「じゃあこうすればいいじゃない!」
そう言って名字はさっきまで自分のつけていた黒い耳当てを僕につけた。日本ではバレンタインデーって女の子が好きな男の子にチョコを送る日なのよだからチョコの代わりに。おそろいね。ありがとうスネイプ。なんて言ってこいつは楽しそうに笑ってるけれど、笑えるか馬鹿!これってペアルックにならないか?というか耳当てはチョコのかわりにはならないしそもそも僕は耳当てなんてつけないしでもこれ意外と暖かいなとか色々考えたけど、僕は名字が言った好きな男の子にの部分が耳から離れず、おそらく赤くなっているであろう顔を隠すのに精一杯だった。
寮に帰ると耳当てをつけた僕を見たレギュラスにハッピーバレンタインですねと何故か苦々しい顔で言われた。くそ、むかつくけど確かにお前の言う通りハッピーバレンタインデーだ!