朝、目が覚めて自分の目を疑った。なぜかと言うと、視線の先、つまり私の右手に"あるもの"がついていたから。頭が混乱して"あるもの"の名前がでてこない。あーそうそう。思い出した。
なんで手錠がついてるのか。
右手を凝視していると、鎖の先の彼がにやりと笑った。この野郎憎たらしいな。
「何この手錠、朝からそういうプレイですか?」
「名前がそうしたいなら…女の子をいたぶるのは趣味じゃないけど」
「嘘、絶対趣味でしょリドル」
「酷い言われようだな」
ベッドのふちに腰かけてくすりと笑う彼の手にも、手錠がついていた。つまり、私の右手とリドルの左手が一つの手錠で繋がっている状態なのだ。
「なんで手錠がついてるんですかね?」
「面白そうだから」
「私全然面白くないんだけど。大体、手錠って両手にするもんじゃないの?」
「そっちの方がよかった?名前はとんだ変態だね」
と言ってリドルが詰め寄ってきた。鎖の長さが無いせいか、やけに距離が近い。軋むスプリングの音に、心臓が少しはねた。
「あんたに言われたくないわ。そうじゃなくて、なんで手錠?」 「名前を縛りつけておきたいって事だよ」
「…うわあ」
「本当なら足にも拘束具をして部屋に閉じ込めておきたいくらいの所を、譲歩してあげてるんだよ?」
「さらりと怖い事言わないで下さい!」
ベッドから立ち上がったリドルが左手をぐいっと引いた。必然的に私の右手も引っ張られ、おかげでバランスを崩してベッドに顔を埋める羽目になった。
「ごめんごめん。名前大丈夫?」
「ごめんて言う割にはすごく楽しそうな顔なんだけど」
「そうかな」
と言ってさらに腕を引っ張るリドル。普通にベッドから落ちて顔面強打したんですけどこの野郎これが目的で自分側にも手錠つけやがったな!
「僕の手と繋がってるんだから、名前に僕を拘束させてあげてるのと同じだよ、これ」
「そんな見下されながら言われても」
そんなことより、この手錠安物で痛いから後で買いにいこうかと言いながらにこりと優しく笑うリドル。
「…うん?」
いやうんじゃないよ私!でもリドルの笑顔(たとえうさん臭くても)見ると、こうやっていつも絆されてしまう。自分の右手を見ながらそっか、私がリドルを縛ってるのか、なんて考えてしまった。まんまと言いくるめられるあたり、私もまんざらでもないのかもしれない。悔しいけど。
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