「よお名前」

いきなりやってきたシリウスとジェームズに腕をつかまれた。そのまま走り出す2人。引きずらる私。痛い痛い腕千切れる!

「急になに!?」

「同罪ってことで」

「一緒にフィルチから逃げ切ろうぜ」

「冗談やめてよ」

私何にも悪いことしてないのに。むしろ被害者なのに。罪を被るなんてごめんなんですけど!なんて文句をたれていたら、後ろからフィルチの怒鳴り声が聞こえてきた。ジェームズとシリウスの名前だけでなく、私の名前まで聞こえたのは気のせいだろうか。今さら1人で抜けても尋問されるに決まってる。こうなったら最後まで逃げきるしかないじゃないか。こいつら後で絶対に殴ってやる。

廊下を必死に走っていると視界の隅にレギュラスが入った。丁度いい所に!

「レギュラス!助けて」

「……………」

確かにあったはずなのに、目をそらされてしまった。いつもだったら「また馬鹿なことを」なんて言ってげんなりした顔を向けてくるのに。レギュラスは何事もなかったかのように、そのまま廊下を曲がって行ってしまった。

「…どうしよう」

「は?何が?」

レギュラスが気になってしまった私は、シリウス達の手を振り払って、レギュラスを追いかけた。無視されるなんて。私、なにか気に障る様な事したのかもしれない。

「レギュラス!」

「…なんですか?」

幸いにもフィルチは2人の方へ行ったらしく、廊下の角を2つばかり曲がった所でレギュラスに追いついた。心なしかいつもより態度が冷たい気がする。

「さっき、なんで無視したの」

「………………」

「私なにかしたかな」

「…嫌いなんです」

しばらくの沈黙の後、レギュラスがため息と共に吐き出した台詞は信じがたい言葉だった。

「嫌い…」

「…貴方なんて」

「レギュラス…」

理由はわからないけれど、レギュラスに嫌われるなんて、私は相当酷い事をしたに違いない。しかも自覚がないだなんて最低だ。嫌われても当然かもしれない。私の視界が霞んできたのと同時に、レギュラスがぽつりと呟いた。


「…兄さん達と仲良くしてる貴方なんて、嫌いです」

「…え」

驚いてレギュラスの顔を見ると、機嫌が悪いような、不満そうな顔をしていた。

「レ…レギュラス…今の」

「違います忘れて下さい」

レギュラスは一瞬はっとしたような顔をして、いつもの涼しげな表情に戻った。嘘、これ、嫉妬されてるってこと?あのレギュラスに?拗ねてたってこと?レギュラスが?

「どうしよう今すごく嬉しい」
「嫌いって言われたのにですか」

「うん…抱きしめていい?」

「なんでそうなるんですか」

それにどちらかというと男の台詞じゃないですかそれ。と言いながらレギュラスは私を抱きしめた。

「どうしようにやにやしちゃうよ」

「やめて下さい気持ち悪い」

「ごめんなさい」

「…僕以外の人間と、こんなことしないで下さい」

レギュラスがするりと指を絡めてきた。シリウス達に腕つかまれたって何も感じないのに。馬鹿だなレギュラス。貴方だけだよ、こんなに心臓が痛くなるの。レギュラス以外とこんなことしないし、嫌われるのは嫌だけど。こんな風に嫉妬してもらえるなら、とか、少しだけ考えてしまっている自分。悪い子でごめんなさい。












(…うん)

(なんですかその間)

(えへへ)

(はあ…次やったら承知しませんよ。)



なんて言ったレギュラスに、繋いだ指を甘噛みされて、そんな考えもすぐにどこかへ行ってしまったのだけれど。













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