なんだか名前の様子がおかしい。ただの俺の勘違い…?いやそんなレベルじゃねえだろこれ。


「…名前?好きだ」

「うん私も好き」

「来てくれて嬉しい」

「なんか急に会いたくなっちゃって…」

おかしい。好きだよなんて言えば冷ややかな目線を向けられるし、会いたいなんて言えば気持ち悪いと罵られるの、に。

「ジェームズ達がたまには二人っきりになれよって…それで…」

今日の名前はありえないほどに素直だった。いつもの彼女からしたら想像も出来ない言動の数々ばかりだ。

「ありがとう、嬉しいよ」

内心焦りながらいつもの様に振舞う俺。(部屋に来たときにどうかしたのかって肩を揺すったら泣かれそうになった)思えば今日は部屋に来た時からおかしかった。俺が名前を抱き締めて迎えると、腕の中にいたのは身体を強張らせ、頬を赤らめ、恐る恐る抱き付き返してくる名前だった。照れ隠しの抵抗も、罵詈雑言や冷ややかな目付きもない。何一ついつもの名前と同じ所はなかった。いや、顔が赤いのはいつも通りだったけど。


「…リウス?シリウス?」

「っと悪い、なんだ?」

「ジェームズ達、今日は必要の部屋にいるから帰ってこないって」

名前の不自然な態度についてあれこれ考えていたせいで名前が話しかけているのに気がつかなかった。どうも調子狂うな…。

「なんかぼーっとしてたけど、大丈夫?」

そういって心配そうに俺を見上げる名前。…いや、案外いいかもしれない。だってこいつ顔はすこぶるタイプだし。いつも悪態つかれてるんだからたまには可愛らしい態度も悪くはない。

「ごめんな名前がいるのに」

と、額にキスをひとつ落とした。

「ううん…いいよ」

真っ赤になった名前はとても嬉しそうだった。そうだこのままでも何一つ不自由はないじゃないか。いつもだったら手を繋ぐのでさえ嫌がる名前に手を差しだせば、素直に手を握り返してくれた。暴力も暴言もない。きっとしたいといえばさせてくれるし、好きだといえば答えてくれる。別にこいつの何が変わったという訳ではない。
黒い瞳も長い睫毛も白い肌も柔らかな身体もシャンプーの香り俺を呼ぶ声も。ただ少し甘さが増しただけむしろ好都合じゃないか。手を焼かなくて済むし、いつでも可愛い名前ちゃんのままだ。繋いだ手の甲を指でさすっていると名前が口を開いた。

「…シリウスって本当にカッコいいよね」

目を見開いて名前を見る。ちょっと待ってくれ、本当に今目の前にいるこいつの口からでてきたのか?

「…今まで付き合ってて初めて言われたぞ、それ」

「嘘だぁ」

「本当だって」

「いつもそう思ってんだけどな」

と、言って名前は不思議そうな顔をした。これが彼女の本心なのだろうかいつも素直になる事が出来ない彼女の。










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