初めての海の味 無遠慮に突っ込まれた指は海のような塩の味がした。 ずっと海にいるとこんな味がしてしまうのか、俺ももうこんな味がするのか、それともやっぱり俺より少し長く海で生きたコイツだからこその味なのか。 自分より細い指先の先端に軽く歯をたたせれば喉裏を引っ掻き指は口内から出て行く。 「……しょっぺぇ」 「感想はそれだけか」 「あと痛ぇよ。引っ掻くとか普通やるか?」 「噛むのが悪いんだろ」 「チッ。しっかし、やっぱりずっと海にいるとこうなるもんなのか?」 「何がだ。知らねぇよ」 ロジャーに股がりながらレイリーは腰に巻かれているサッシュを外しながら上着を腰まで脱ぐと、ロジャーの首に巻かれているスカーフを引っぱり自分の方へ近づけると手際良く外し、バランスを崩したロジャーは再び枕へと落ちる。 「いて」 「痒くも無いだろ」 「まぁな。でも優しくしてくれてもいいんじゃねぇの、相棒」 「野郎相手に優しくなんて誰もしないだろ」 「んじゃ、相棒特権ってことで」 「残念ながら却下だ。船長殿」 「いい面してんなぁ、お前」 声を出しながら笑うロジャーを見下ろしながらレイリーはベストのボタンを外しシャツのボタンに手をかける。 肩を震わせて笑うロジャーの身体を押さえつけながら冷えている指先を鍛え上げられた筋肉へと這わせばようやく笑い声は納まり、視線が見上げてくる。 その目を見つめていれば伸びてきた手が頬へと触れ、眼鏡のフレームを触ったかと思えば直に外され枕の横に置かれる。 「おい」 「どうせ見えてるんだろ」 「……まぁな」 「んじゃーいらねぇだろ。邪魔だ」 「……」 口角を上げて笑うロジャーを見下ろしながらレイリーは溜め息を吐き、再びシャツを脱がせる作業へと戻る。 黒いシャツの下から曝け出された肌にはいくつもの細かな傷が刻まれている。名誉の負傷は残念ながら存在しなく、馬鹿をやった傷も数少なくは無い。それでもこの半分以上の傷が自分が隣にいる時に出来た物だと思えば少し感慨深くもなる。 全てのボタンを外し終えた指先で、その傷に触れていればロジャーの膝が半身を潰す感触を感じる。 「おい」 「なんだ?」 「なんだじゃねぇだろ。顔が笑ってんだよ」 「いやー、お前が男で勃つなんてな」 「それなりにお前と一緒に歳食っちまったからな」 世も末だなぁ、と笑いが含まれた声で言うロジャーの腕を取り、レイリーは自身の下半身に誘導させる。 足から感じる感触とはまったく違う、固さを増した感触に驚いたように目を見開くが嫌悪感は無いのか、興味深そうに握りしめる。 「っ……」 「よおレイリー、俺を見て興奮してるか?」 「はっ、お前を見て興奮してんだよ。抱く理由には十分だろ」 「十分すぎだ」 眉間に皺を寄せて目を細めて答えるレイリーの表情を眺めながらロジャーは満足そうに笑うと、握りしめる手を緩め腕を股がるレイリーの首に回す。 距離を詰めるように自分へ引き寄せ額を合わせると、右目の傷の部分に鼻頭を触れさせる。 目を泳がせる事も無く見つめ返してくるレイリーを眺めながらロジャーは鼻で笑い、目を閉じて軽く唇を合わせると直にレイリーの胸を押して自分は枕へと戻る。 上げた右手の指先を少し曲げて、誘うように動かすといつものように悪巧みをする顔で言う。 「こいよレイリー、ようやく船長を倒す機会だぜ」 「上等だ」 「今更すぎる初体験っつーのも悪かぁねぇな」 見下ろしながら笑うレイリーはロジャーの肩に両手をつき、耳元で聞こえないように囁く。 「記念に人を通した海の味ってのを覚えさせてやるよ」 「……」 一瞬、何を言われたか分からないとでも言うような表情をしたロジャーは、数秒経ってから言葉の意味に理解したのか身体を震わせて口を開いた。 「かっこつけが」 END? あの海賊服になってようやくレイリー×ロジャーになったらいいなぁという妄想を。 にゃんするまでに時間がかかる二人^^ |