「………ママ?」 私は幼い頃に両親を亡くした。 父は40歳で、母は50歳で。 二人とも…このクリスマスの日に。 「ねぇ…おばさん…ママとパパわ…?」 幼い私にはその時の現状がよく分かっていなかった。 父と母と私で車で旅行に行った。 その帰りは生憎の雪。 しかも、大雪。 母は、父を止めた。 「このまま帰ったら危ないわ。もう一泊しましょう」 …と。 しかし、父は決めた事は変えない頑固者。 案の定、雪の中帰る事に。 その時に起こった出来事はよく頭に残っている。 山の真横の細いカーブ道を通っていた時、あと少しという所で雪崩れに遇ったのだ。 私は母に抱き抱えられ、傷は負ったがなんとか無事だった。 しかし、目を覚ましたのは母の胸の中ではない。 目の前に広がっていたのは大量の雪と土砂、車の残骸。それからぐったりと横たわった母と父の姿。 幼い私はその無残な程の光景に、目を覆い泣き叫んだ。 [*前] | [次#] P.30 |