「今日から一緒に授業するなまえだ。みんな仲良くするように」
「はーい!」
「どこから来たの〜?」
「なんでは組に?」
「ナメクジさん好き?」
「女の子なのに忍たまなの?」
「……」
「ストップストップ!なまえが困ってるだろうが!」
次の日の最初の授業になまえはやって来た。あれからなまえは字の読み書きが出来ないから一緒に勉強したいということを土井先生に伝えたら快く承諾してくれた。それをなまえに伝えたらものすごく嬉しそうにしていたから、俺としても提案してよかったと思った。土井先生と前に出ているなまえはたくさんの質問におどおどしている。なまえみたいなおとなしい子がは組で勉強するのは難しかったかも知れない。だけどい組じゃ絶対無理だろうしろ組は暗いから却下。なんとかしては組に馴染んでもらおう。
「なまえの住んでいた村は先日山賊に襲われて、なまえは家と両親を失った。その時のショックで声が出なくなっている」
「…喋れないんですか?」
「あぁ。だがそれ以外は普通の女の子と変わらない。みんな仲良く出来るな?」
自分の事情を話すように言ったのはなまえだった。一緒に勉強するなら友達になりたい。友達に隠し事はしたくない。後悔しないか?という土井先生の言葉にはっきり頷いたなまえの目の光を、今も覚えてる。なまえの顔を見ても後悔してるようには見えない。それどころか軽く笑って見せた。
「もちろん!なまえは今日からは組の一員だ!」
「僕福富しんべヱ。よろしくねえ」
「私は猪寺乱太郎」
「笹山兵太夫!」
「夢前三次郎!」
「皆本金吾」
「の同室の山村喜三太だよ〜」
「俺は加藤団蔵!」
「佐武虎若。よろしく!」
「二廓伊助だよ」
「学級委員長の黒木庄左ヱ門!」
「……」
「あのなぁお前達…いっぺんに言っても混乱するだけだろう?」
「あ、それもそっかあ!」
あはははは、とみんな笑い出した。面白かったのかなまえも笑ってる。よかった。なまえ、やっと笑うようになった。なまえと目が合うとなまえは照れ臭そうに顔を赤くした。
「あれ?そう言えばきり丸、自己紹介してないんじゃないの?」
「俺は事前にしてるからいーの」
「えー!きり丸だけ先になまえと友達だったなんてずるーい!」
乱太郎の質問にそう返したらしんべヱがわめいた。何もそれくらいでわめくことないだろ。ぎゃんぎゃん騒ぐしんべヱを土井先生がなだめる。それから俺の隣を指差した。
「なまえはきり丸の隣だ。乱太郎、きり丸、しんべヱ。同じ席なんだ、見本になる態度で授業を受けるように」
「えーもうお昼寝出来ないの〜?」
「お昼寝していいの?」
「あああ駄目だぞなまえ!お昼寝なんて授業は無いからな!しんべヱ!お前という奴は…!」
げいんッと土井先生からゲンコツされた頭を押さえてしんべヱは涙目になっていた。なまえは口元をかくしてほっぺたをゆるませている。面白くてたまらない、って感じだ。乱太郎がちょいちょい手招きしてあげるとなまえはすぐ俺の隣に座った。なまえのために用意していた筆や硯を見て目をキラキラさせてる。もしかして初めて見る、のかな。読み書きを覚える道は険しそうだ。
「さて、今日の最初の授業はなまえにあわせて習字の復習をする。特に、団蔵は頑張れよ」
「えぇ〜…習字嫌いなのに…」
「だからだ。なまえより汚い字を書いてみろ、私は泣くぞ」
ずーっと笑いっぱなしのなまえを見て、は組につれて来てよかったと心から思った。