1/2

「喧嘩?セナとモン太くんが?」

『うん…』



泥門が帝黒と戦う三週間前の夜、まもりから電話がかかってきた。何でもふたりは怪我だらけで、なんとなくお互いを避けているらしい。そう言えばモン太くん、気合いが入ってないって一休がかなりキレてたっけ。帝黒の偵察に行った帰りからちょっとおかしかったな。帝黒で何かあったとしか思えないけど…試合前にあんなコンディションは非常にイタダケナイ。泥門には予備の選手なんて素人しかいないんだし。一休もモン太くんにはすごく期待してるみたいだから、気合いが入ってないモン太くんにかなりイライラしてるみたいだ。今日は学校で残ってる組の練習を見ていたから私は何も知らないのである。



『セナに訊いてもケルベロスに噛まれたって言うし…あれ、絶対お互いに殴り合ったのに』

「放っておいたら?セナもモン太くんも子どもじゃないんだしさ。きっと自分達で解決するよ」

『そうかな…でも、怪我されるのは心配するし…』

「殴り合いの喧嘩は男の特権でしょ。喧嘩する程仲がいいって言うし平気平気」

『そ、そういうもの?』

「私とまもりだって中学の時かなり喧嘩したじゃん」

『あ、あれは名前が悪いんでしょ!私が大切に取っておいたシュークリーム食べるから!』

「まさかシュークリームひとつでビンタされるとは思わなかったよ」

『…もうこの話おしまい』

「あはは、うん」

『セナ達のことは、名前の言う通り放っておいてみる』

「うん。私も明日そっちに行くよ」

『うん、待ってるね』



ピッと通話を終えた携帯を閉じる。しばらく携帯を見つめて、なんとなく溜め息を吐き出した。さて。モン太くんはどうしたものか。何があったのかな?モン太くんはともかく、セナが人を殴るとはびっくりである。そうやって本気でぶつかれる相手が出来たってのは姉ちゃん分としては嬉しいけど…でも、私が口出すことじゃないだろうし…時間に任せるしかない、かな?まもりにも言ったけどセナも子どもじゃないんだし、うん!なんとかなる!携帯をポケットに突っ込むとジャンプを読んでいた雲水が顔を上げた。因みにここは雲水と一休の部屋だったりする。


「姉崎さんか」

「うん。なんか色々大変みたい」

「モン太か…大丈夫だといいが」

「大丈夫な気がするけどね」

「にしても、喧嘩する程仲がいいか。じゃあ名前さん達はまだまだなのかな」

「なにそれ」



雲水はくすくす笑いながらジャンプを閉じた。なにそれ。私と阿含なんていつも喧嘩してるようなもんじゃん。ん?違うかな?

最近、阿含はあんまり部屋にいない。街にいる訳でもなければ女漁りに行ってる訳でもなく、ずーっとトレーニングルームにこもっている。どちらかと言えば夜行性な阿含は昼近くに目覚めて行動する為、朝からしっかり学校に行ってる私とはほとんど顔を合わせることがない。もし仮に阿含が学校に来ているとしてもクラスが違うから、やっぱり顔を合わせることはないのだ。正直寂しいしつまらないけど阿含の邪魔はしたくないし我慢。唯一の欠点だった練習不足が無くなった奴は、もっともっと強くなる。そんな阿含の足枷にはなりたくない。だから夜は暇潰しに雲水の部屋に入り浸っている。雲水は優しいから私を迎えてくれる。…これ私が浮気しても無理なくね?



「思い切り喧嘩しても、それを乗り越えていけばその恋人は大丈夫だとよく聞くぞ」

「ううむ…聞いたことあるけど、私と阿含が喧嘩ねえ…」

「有り得ない話か?」

「悲しいけど有り得る。てゆうか喧嘩する程仲がいいのは雲水達じゃないの?」

「…俺と阿含、仲がいいか…?」

「…この話やめよう」



こうして夜は更けていく。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -