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サングラスの奥の目と、ぶつかった。



「…あ、あご」

「テメェ何してんだコラ」

「いっひゃい!」



有無を言わさず阿含から両頬っぺたをつねられ左右に引っ張られた。鼻が潰れて変な顔になるわまともに喋れないわ恥ずかしさ倍増。しかも阿含は容赦ない。手加減なんかない、マジで痛いのだ。阿含の手を叩いて抵抗する。更に痛みが増して本気で焦った。ち、千切れる。ヤラレル。

覚悟した時、ようやく阿含の手が離れていった。頬っぺた痛い。ヒリヒリする。なんなの、なんで不機嫌なの。意味も分からず阿含に肩パンをかます。反撃がきたけど頑張って避けてやった。そしたら、突然頭にダウンジャケットを掛けられた。



「な、なに!?」

「みっともねえ格好してんじゃねえよ」

「みっ…そ、そんなことな」

「ペチャパイ寸胴短足チビが頭狂ったかさっさと着替えて来い」

「言い過ぎだ!」



お前それでも私の彼氏か!阿含のダウンジャケットを肩に掛けながら阿含を睨み付ける。阿含は眉間に皺を刻んだままチッと舌打ちした。…私がチアガールの格好しただけでこんなにキレるって、よっぽどみっともないのかな。結構ショックなんですけど。しょんぼり肩を落とす。ちょっとくらい、まあ「可愛い」とかは望まないからせめて「似合ってる」とか…似合ってなかったらそんなこと言えないけど。慣れないローラースケートで頑張って回れ右をする。足を引きずるようにして進んだ。そしたら、控えめがちな、低い声がした。



「急げ。帰んぞ」

「………、うん!」



一瞬何を言われたのか理解出来ずに固まって、理解して、私は自分で顔が緩むのが分かった。だって阿含が「帰んぞ」って、それって一緒に帰ろうってことだ。阿含からのお誘いなんて初めてでちょっと、いやかなりびっくりしたけど、すごく嬉しい。部活も終わるし丁度よかった、急がなきゃ。なるべく早く部室まで向かう。途中雲水に背中からクロスチョップしてやった。神龍寺組は相変わらず真っ赤だった。

制服に着替えてグラウンドに出ると阿含とヒル魔くんが睨み合っていて、こいつら仲良くなれねえなと思った。どっちが悪いか分からなかったから取り敢えず間に入る。不機嫌な阿含に対してヒル魔くんは楽しそうに笑っていた。
















「街のジムにいたんだ」



阿含は頷いた。鼻の頭が赤くなって吐く息が白く滲む。そっかあなんて呟きながら自動販売機で勝ったホットのカフェオレを一口飲んだ。あー温まる。ほんとはコンビニで肉まんを買いたかったんだけど阿含が早く帰るってうるさいから泣く泣く諦めた。今度肉まん奢らせてやる。地獄の1080階段を登りながらドレッドヘアーを見つめた。



「で、なんであんなにキレたの?」

「…うるせえ」

「ヒル魔くんと喧嘩してたし」

「してねえ」

「…あのさ、もしかしてさ」

「あ゙ー?」



カフェオレをちびちびっと飲んで阿含を見上げる。阿含は足を止めて私を見下ろした。相変わらず眉間に皺。まだイライラしてるみたい。私は頬っぺたが緩まないよう気を付けながら、おずおずと口を開いた。



「嫉妬したの?私があんな格好してて」

「────チッ」

「ぎゃあっ!」




無言のまま頭を殴られた。でも、それが肯定のしるし。そっかそっか、やっぱりか。阿含のことだからそうじゃないかなーって思ってたんだ。ああ、もう無理。顔がにやける。痛む頭を押さえて俯く。なんだこの男、可愛い奴め。とは口が裂けても言えないけど。



「…カフェオレ飲む?」

「いらねえ」

「そっか」

「…にやけんな殺すぞ」

「ちょっ、待ってよ!」



なんか恥ずかしくなってきた。顔がじわりじわりと熱くなるのが分かる。阿含から顔を逸らして先に階段を登る。阿含は追ってこなかったけど、眉間の皺は消えていた。

阿含と付き合って半年未満。意外と楽しくやっているのである。

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