凄まじい頭の痛みに目を覚ました。うへえ気持ち悪い、なにこれ。なんで?どうして?理由をよく考えて、昨日の夜は間違えてお酒を飲んだのを思い出した。それでこの頭痛か、最悪だ。寝返りを打つ。すると何かにぶつかった。…嫌な予感。恐る恐るぶつかった何かを確認したら、それはエースだった。両腕を投げ出して大口開けてくかーっと寝ている。…イヤイヤイヤ。なんであたしがエースと寝てるの。エース半裸だし、ってこいつが半裸なのはいつものことだった。痛む頭を押さえる。そう言えばあたしの世話はエースがするんだったっけ。だからって一緒のベッドで寝るかな、普通。幼女ってそんなもん?


「あー…水欲し、…」


身体を起こしてぼやく。そこで自分の身体の異変に気付いた。声が普通。視界が高い。手足がむちむちしてないし程々に長さがある。身体が、元に戻ってる。いやまずは何より、


「な、なんで裸…?」


エースがいたから大声は出せない。何故かあたしは何も着ていなかった。昨日ちゃんと服着てたのになんで!近くにあったブランケットで身体を隠す。そこで足元に子供用の白いワンピースっぽいものを見つけた。何故『っぽいもの』なのかはビリビリに破れていたからである。ここでひとつ仮説を立ててみた。幼女から大人になったあたしの身体に子供用ワンピースは耐え切れずビリビリッ。そういうことだろうか。まあなんだっていい、とにかく服だ。いやエースを起こして状況説明?…状況説明は服を着てからでもいい。ここがエースの部屋だと考えるとTシャツくらいあるはずだ。たぶん。半裸だけど一枚くらいなら。ブランケットをぎゅっと掴んで部屋を見渡した。


「エース、てめェいつまで寝てやが、る…」


部屋を見渡したらドアが開いた。そこにはマルコさんが立っていて、あたしを見た途端語尾が小さくなった。目をこれでもか、ってくらいに見開いてる。ああそっか、あたしが解らないんだ。マルコさんあたしです、なまえです。そう言おうとしたらマルコさんは目元を押さえて顔を逸らした。


「…悪い。邪魔したな」

「…ちがっ、これはその!」

「アンタいつその馬鹿に連れ込まれたんだい」

「だから違いますって!」


マルコさんは最悪な誤解をしてる!あたしが裸だからだろう、マルコさんはあたしをエースの女か何かだと勘違いしてるんだ。あたしが裸なのはまあ色々仕方ないことでエースが半裸なのはいつものことだろ!あたしは立ち上がってマルコさんに近付いた。ら、マルコさんはじりじり後ずさった。なんでだよ馬鹿!


「ちゃんと見て下さいマルコさんあたしです!なまえですよ!」

「…ちゃんと見ろって無理に決まってんだろい」

「怒らないから見て!変態とか言わないから!」

「それじゃアンタが変態だ」

「ああもう!あたしなんですよ!身体が元に戻っ───」


言いかけて、くらりと眩暈がした。それは立っていられない程ひどくなりあたしはその場に倒れ込む。肩からかけていたブランケットが宙を舞ったけど羞恥を感じる余裕はない。なに、なんなの。様子がおかしいあたしに気付いたのかマルコさんがあたしの肩を抱き起こした。マルコさんの顔が歪む。ぐにゃぐにゃになる。あれ、あたし、どうしたんだろう?

時間にしたら十秒くらいだったのかも知れない。気が付いたら眩暈は止んでいた。なんだったんだろう。クリアになった視界にはこれまた目を見開いたマルコさんがいた。なんでそんな顔…あれ?


「…お前…」

「う、うそ…!」


視界が急に広くなった。足が床に付かない。完全にマルコさんの腕の中にいる。口から零れる声は舌っ足らず。手足が短い。嘘だ、嘘でしょう。


「ま、またちっちゃくなったあああ!」


小さくむちむちした手で頭を抱える。忘れていた頭痛に襲われて溜め息が零れた。もうやだどうなってんだ!

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