昔から米を縦に食べると身長が伸びる、と言うけどその話が本当ならこの人はどれだけの米を縦に食べてきたんだろう。しかもこれ身長の問題じゃないよね、肩幅とか筋肉とかもすごいよね。三日月を横にしたみたいな白いひげ、鼻に伸びるチューブ。お年寄りといった印象はものっそい薄い。なんなのこの人。巨人?巨人の船長なの?天井に頭ついちゃうよ。顔を最大まで上げないと顔が見えない。船長さんは座ってるのになにこの差。あたしはと言えばエースに抱っこされていた。降ろせと言っても降ろしてくれなかった。


「なまえをこの船に置いてもいいだろ?」

「構わねェが、誰が世話するんだ」

「おれがする!飯も風呂も寝かすのもおれがするから!」

「えええふろはやだよ!」


あたし中身は二十なんだってマジで!嫁行けなくなる!エースはあたしを本当に幼女だと思ってんのか。船長さんにした説明もなまえは異世界からひとりで来たんだ、可哀相だろ?こんな小せェのにって言ってたし。会ってちょっとしか経ってないけど解った。エースは馬鹿だ。


「なまえ」

「ひゃい!」

「グララララ、緊張すんじゃねェよ。こっちに来い」


突然船長さんに名前を呼ばれて変な返事をしてしまった。大きな手を差し出されてあたしはどうしたらいいのか解らずエースを見上げる。エースはあたしの頭をぽんぽん撫でて船長さんに近付くとあたしを船長さんへ手渡した。え、ちょ、か、片手に乗ってるすごい!なんか面白い!船長さんはゆっくり手を移動してあたしを自分の膝に座らせるとニッと笑った。渋い、この人かっこいい。正に海の男って感じ。あ、そっか。この人海賊の船長なんだ。


「お前は今からおれの娘だ。ここにいる奴らはみんな家族だと思って好きにしろ」

「…せんちょうさんありがとうございます!」

「船長さんじゃねェ、親父と呼べ。敬語も要らねェよ」

「おやじありがとう!」

「じゃあ今日は宴だな。おれサッチに言って来る!」


エースは嬉しそうに笑って部屋を出て行った。なるほど、エースがこの人を親父って呼ぶ意味が解った。みんな家族なんだ。じゃあナースさん達はお袋?いや、絶対違うな。てゆうかあんなナイスバディなお袋嫌だ。渋面でナースを見ていたら親父の手が頭を撫でた。


「お前、本当は二十なんだろう」

「…そう!そうなの!エースはきいてくれないけど!」

「さっきナースから聞いた。悪魔の実を食った訳じゃねェんだな?」

「あくまのみ?」

「知らねェならいい。後でエースに訊け」


そう言って親父はまた頭を撫でた。そっか。ナースさん達の中にはあたしが二十だってちゃんと解ってる人もいるんだ。よかったよかった、なんか安心。親父はあたしの味方だ。にしても悪魔の実ってなんだろ。猛毒っぽいけど…後でエースに訊いてみよう。

てゆうか馴染みかけてたけど、なんであたしこんなことになっちゃったんだろ。ただ家で寝てただけなのに空から降ってくるとか訳わからん。この船に落ちて来てよかった。ん?そう言えばあたしを助けてくれた人がいたんだっけ。確か…マルコだ。おかっぱ頭の女の子が浮かぶ。後でお礼を言わなきゃ。


「なまえ!」


ドタバタいわせながらエースが戻ってきた。親父の膝からあたしをひょいっと抱き上げる。きらッきらの笑顔を見せられた。


「みんながお前を見てェってさ。行こうぜ」

「わあぁあぁあはしらないでえぇえぇえ」


視界がガックンガックン揺れる。親父はグララと笑って見ているだけ。畜生仲間じゃなかったのか。うえっぷ、と怪しい声が漏れた。
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