「エース、あれ見ろい」

「ん?…なんか落ちてんな」

「ガキだよい。人間の」

「…ガキ?」

「望遠鏡で見た」

「見てねェで助けろよ!」







と、言う訳で。

なんとか落ち着いたあたしは何故あたしがここにいるのか(よく見たらあたしの部屋じゃなかった)ここは何処なのか、あんた達は誰なのかを説明して貰った。なんでもあたしは今朝、空から降ってきたところをマルコって人に助けていただいたらしい。そこから意味わからん。何処ぞの天空の城じゃあるまいしなんで空から降ってくんの。しかもなんであたしは幼女化してんの。あたしは立派に二十だったんですけど。夢だと思いたかったけどさっき自分でほっぺたを抓ったら痛かったから現実だった。もう最悪だ。なんなのこれ。


「なまえ、大丈夫か?」

「だいじょうぶじゃない…」

「抱っこしましょうか?」

「クッキーあるわよ?」

「…だから、あたしははたちなんですって」


ナースさん達はあたしのほっぺたを摘んだり頭を撫で回したりとせわしない。あたしが喋ればみんな嬉しそうにキャーキャー騒ぐ。嫌だなあもう、声は幼いし呂律が上手く回らないし。それがナースさん達にはツボらしいんだけど。

このナースさん達は船医でエースは隊長をしてる。今あたしが居るのは船の上で、ここは海賊船だと説明された。白ひげ海賊団っていう結構有名な海賊らしい。ぶっちゃけ馬鹿じゃね?と思ったけどみんな顔が本気だったから嘘じゃないんだと思った。エースは院長じゃなかったのか。てゆうか可笑しいだろ。今時海賊とかナイだろ。アニメじゃないんだからさ。エースにそう言ったら女の子がだろ、とか言っちゃ駄目だと言われた。会話が成り立たねェよ!


「にしても海賊を知らねェのかァ…お前くらいのチビでも知ってるはずなんだがな」

「あたしのいたところではそんなのなかったもん」

「空島は海賊いねェのか?」

「そらじま?」

「あれ?なまえは空から降って来たから空島出身だと思ってたんだが」

「だからいったでしょ、あたしはにほんからきたの」

「ニホン?」


空島ってなにそれ。空に島があるの?続けて言ったらエースは手を顎にやって唇を「へ」の字に押し曲げた。眉間に皺を寄せてうんうん唸っている。周りのナースさんも頬杖をついて悩んでるみたいだった。…嘘じゃん。日本を知らないってどんだけ。海賊はいるって言うし日本は知らないって言うし、この人達みんな変だよ。外人っぽいけど日本語通じるしどうなってんの。これ疑問に感じてるのあたしだけじゃないよね?脳みそまで幼女化してないよね?


「エース隊長、なまえは違う世界から来たのではありませんか?」


不意にそんな声が聞こえた。なんかこう、ロリっぽい声だった。わたし星の隅っこの国に住んでるんですう、ってことを言い出したい声だった。てゆうか何だって?あたしが違う世界から来た?ロリっぽい声がした方を見たら栗色のふわふわウェーブの髪に青い垂れ目のナースがいた。うわあロリっぽい。


「またリジィはそんなこと言って。本の読みすぎよ」

「だってこれじゃ話の辻妻が合わないです」

「いや、リジィの言ってることも一理あるぜ」

「まあ隊長、リジィのこと信じるの?」

「海賊がいねェなんざ可笑しいしニホンなんつう国は聞いたことがねェ」


「じゃあなまえは自分のいた世界からグランドラインに落っこちて来たってこと?」


おいおいおーい、あたしをそっちのけで何を話してんだ。ぐらんどらいんって何。ロリっぽい人、リジィだっけ。その人の言うことが正しいならここはあたしのいた世界じゃないってこと?…な、なんだそれ。アレか。トリップってやつ?でもそれってアニメとか映画とか漫画の世界じゃ…あー頭痛い。ちっちゃくなった手で頭を押さえた。すると突然ひょいっと持ち上げられた。びっくりして顔を上げればすぐ近くにエースの顔。ドアップ。ワアアアあたし抱っこされとる!


「おろせえええ!」

「可哀相にな…」

「…は?」


エースは凛々しい眉を下げて哀れむような顔をした。よく見たら周りのナースも同じような顔をしてる。え、なにこの空気。


「こんなに小せェのに異世界からひとり来ちまうなんて」

「だからあたしははたちだっていってるだろうが!」

「安心しろ!親父ならお前を船に乗せてくれるさ!」


駄目だこいつ馬鹿だ。人の話聞かない。てゆうか大体なんでこの人半裸なんだよ。


「あ、そういや親父になまえ紹介してねェ」

「船長なら自室にいますわ」

「よし!行くぞなまえ!」

「あああもういみわからん」


親父って誰だよ。

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