「うみ!サッチあそぼ!」

「おう!遊ぼうぜ!」

「エースもあそぼ!」

「…兄ちゃん泣くぞ」


午後、モビー・ディック号は無人島に着いた。野生の動物がちらほらいたけど他には綺麗な緑やら海やらが広がるだけで、テンションはMAXに上がった。水着は無かったからTシャツに短パンだけど、いい!海だ!遊ぼう!普段なら簡単に持てるビーチボールも三歳児にはちょっと辛い。ビーチボールを両手で抱えてよたよたしながらエースに近付いたらエースにじろりと睨まれた。


「なまえ、エース兄ちゃんは海に嫌われてるから砂浜でお留守番だ」

「あ、そうだった。じゃあマルコさんもジョズさんもおやじもだめか」

「なまえ〜、砂浜で兄ちゃんと遊ぼうぜ〜」


エースは手を伸ばして抱き付いてきた。せっかくの海なのに砂浜で遊ぶなんて、可哀想だなあ。能力者って大変だ。エースの頭をぽんぽんっと叩いてビーチボールを押し付ける。エースはキョトンと目を丸くしていた。


「やま、つくろ。あとマルコさんうめよう」

「お…おぉ!流石おれの妹だぜ!」

「なまえ、海はいいのか?」

「あとでいく!サッチもやまつくろうよ」

「いんや、遠慮する。リジィちゃんナンパしてくる」

「さいてい」


ビーチボールを振りかぶってサッチの腰にぶつけた。サッチは鼻の下を伸ばしてスキップしながらナースがはしゃぐ海の方へ行った。そりゃ確かに、リジィのビキニ姿は刺激的だったけども…。黄色いフリフリヒラヒラフリルのビキニは流石のあたしも言葉が出なかったくらいだ。あのエースでさえ目を奪われていた。リジィだけじゃない、他のナースだって刺激的過ぎる。みんなスレンダー且つグラマーなんだもん。走る度に胸がばいんばいん揺れてさ、女でも見ちゃうって…。よく見ればサッチだけじゃなくてラクヨウさんやアトモスさんもナース陣に近付いていた。男ってアホだと思った。


「よし、山作るか!」

「うん!そのあとマ」

「マルコさんを埋める」

「そう!…え?」

「ほぉ…そうかい」


真後ろから聞こえた声に冷や汗がドバッと吹き出した。嘘だろう何故後ろに居る。駄目だ、振り返っちゃいけない。目の前にいるエースに助けを求めようとしたら首根っこをがっしり掴まれた。ああああ逃亡失敗!恐る恐る振り返れば、そこには愉しそうに笑うマルコさんが…うっわ怖い何この人!幼女に対するオーラじゃない!


「ごめんなさいマルコさんごめんなさい!」

「スイカ割りのスイカにしてやる」

「死んじまうって」


マルコさんの後ろからひょいっと顔を覗かせたのは十六番隊の隊長・イゾウさんだ。肌の色が白く、真っ直ぐで濡れたような艶のある髪が綺麗な男の人。今日はうなじのところでお団子にしてある髪もいつもは後れ毛一本無く結い上げてある。女形っていうのかな?それにそっくりだ。口紅に違和感は無い。イゾウさんは他の人と比べると東洋系の顔立ちをしている。名前もどことなく和名っぽいけど…この世界に日本に似た場所があるのかも知れない。今度訊いてみよう、とイゾウさんに助けて貰いながら思った。女の人みたいに綺麗なイゾウさんだけど意外と筋肉質で、頼もしい胸板にしがみついた。


「ありがとうイゾウさんっ」

「よしよし、おっかないおじちゃんだねェ」

「てめェも十分オッサンだろい」

「おれは見た目が若いからいーの」


イゾウさんは自慢気に笑う。確かにイゾウさんは若く見える。マルコさんは…年相応、って感じだもんなあ。いやいやマルコさんはマルコさんらしくていいですよ、って言ったら怒られそうだからやめておく。イゾウさんはあたしを地面に降ろすと、何を思ったのかいきなりマルコさんにタックルした。マルコさんも反応出来なかったらしくふたりして砂浜に倒れ込む。


「イゾウ!いきなり何しやがる!」

「ほら今だなまえ!さっさと埋めちまいな!」

「え?え??」

「よっしゃあ!兄ちゃんも手伝うぜ!」


マルコさんの腕をイゾウさんが、マルコさんの足をエースが押さえ付ける。騒ぎを聞き付けたジョズさんとビスタがやって来て、動けないマルコさんを見るなりバッサバッサと砂を掛け始めた。うわあ、豪快。みんな楽しそう。いや、マルコさんだけは不機嫌MAXな顔をしてるけど。諦めたのかマルコさんは抵抗をやめてがっくりと首をもたげた。ううむ…まあ、たまにはこんなのもいいよね?エースの隣に座ってマルコさんの身体に砂を掛けた。マルコさんの逞しい胸板に山をふたつ作って「きょにゅう」と言って笑ったらマルコさんは今までにないくらい怖い顔をした。その場にいるみんなが真っ青になった。


「マルコさんごめんなさい」

「お前を海に投げ飛ばすことは海パンに着替える頃から決めてたよい」

「まじですか」

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